エッセイ

2020年03月19日

勇気ある告発が動かす(2020年3月18日付「しんぶん赤旗」西日本版・水曜随想)

 性暴力を許さないと声をあげるフラワーデモ。思い出すだけでもつらい体験を人前で話すことなど簡単にできるものではありません。しかし「あったことをなかったことにはできない」「こんな社会や制度は変えねば」と被害にあわれた皆さんが勇気をもって告発をするその場に私もこの間参加させていただいています。
 
 2月に福山市で行われたフラワーデモでお会いした、40代男性で東広島市在住のHさん。Hさんは中学生のときにクラスでいじめにあい、教室でズボンや下着を脱がされるなどの性暴力を受けた被害者のお一人でした。伊藤詩織さんの事件が他人事と思えず、また今の政権のセクハラを容認するような姿勢が許せず、何かしなければと思っていたところにこのデモがあるのを知ったと
Hさんには聴覚過敏症があり、長い時間電車に乗れないからと比較的静かなバスを乗り継ぎ、半日かけてまさに「這ってでも…」の思いで福山までやってこられたことを、デモ終了後お茶を飲みながら話してくださいました。
 
 いまどれだけの人がこうした被害に苦しみ、そしてどれほどこうした寄りそい合いつながり合う場を求めているのか。あらためてそのことを痛感させられるHさんとの出会いでした。
 
 そんなやむにやまれぬ思いで集まったデモは今月47すべての都道府県で開催。そうした中、今月このデモが始まるきっかけにもなった性被害事件の無罪判決の一つであった名古屋地裁の一審判決が破棄され、高裁が逆転有罪を言い渡すなど、勇気ある告発と行動が社会を動かしています。
 
 「暴行・脅迫要件」の撤廃はじめ刑法の性犯罪規定の抜本改正、被害者支援の体制強化など、性暴力をなくし被害者を守るための政治の責任をはたすことはいよいよ急務です。
 
 コロナ問題の深刻な事態のまま、かつてない大きな不安と先行き不透明な新年度が目前に。いっそうの「Me Too」「With You」を大切に、今日も暮らしの現場へとかけつけます。