エッセイ

2020年05月27日

英国ジョンソン首相「社会はまさに存在する」(民報2020年6月)

「社会はまさに存在する」「われわれの国民保健サービスを守ろう」と訴えたのは、ご自身も新型コロナウイルスへの感染で生死をさまよい無事に回復されたイギリスのジョンソン首相。1980年代にサッチャー首相が新自由主義路線に大きく舵をきる中で述べた「社会なんてものはない。あるのは個々の男と女、家族」との発言を意識したものだと報じられ、いま大きな注目を浴びています。

日本でも世界でも「ポストコロナ」をさまざまな方たちが論じ始めていますが、その大きな一つが新自由主義路線の破たんについて。例えば広島県では1993年に全国で初めて保健所と福祉事務所を統合し、県内の保健所が次々と減り21施設あったのが今は7施設となりました。100万都市の広島市でも各区単位にあったのが今は1つに。保健師も減らされ、このコロナ禍で今どこでも人手が足りない、対象範囲が広すぎるとパンク状態になっています。感染症指定病院の実態はどうか。広島市の舟入市民病院は1895年に感染症専門の病院として設立されましたが、1986年に感染病床が100床から50床へと減らされ、2014年の独立行政法人化を機に50床が16床へと減らされました。さらに自治体そのものも、と広島県は当時86市町村あったのが「平成の大合併」で今や23市町となりました(合併率73.3%は全国二番目の高さです)。

すべて理由は「金がかかるから」と「効率が悪いから」。歴代自民党政権によって経済と効率ばかりが優先され、さらには学校も病院も公共施設全般も減らす方向へと誘導し、とうとう「田舎にはもう住むな」と言わんばかりのコンパクトシティー構想まで推進中です。多くの人たちがコロナ危機の中で「こんな社会のあり方で本当にいいのか」と真剣に考えています。そんな中での例の検察庁法改正案。国民の怒りが爆発しました。いま「#改正案に抗議します」に続くツイッターでの新たな合言葉は「#さよなら安倍政権」。社会と政治のあり方を根本から問う激動の6月です。