エッセイ

2023年09月30日

関東大震災100年ー朝鮮人、中国人、社会主義者虐殺もー =民報2023年10月1日=

今年9月は関東大震災が発生してちょうど100年。10万5千人以上が犠牲となる大災害であったこととともに、世の中の混乱と不安に乗じてデマを拡散し、朝鮮人や中国人、社会主義者らを軍隊や警察、自警団が大量に虐殺したという事実を決して忘れるわけにも、あいまいにさせるわけにもいきません。
 今年、各地でいろんな企画がおこなわれています。9月中旬に仕事で上京した際、新宿区新大久保にある「高麗博物館」に行きました。企画展「関東大震災100年 隠蔽された朝鮮人虐殺」を学ぶためです。会場に入るやいなや飛び込んでくるのが、虐殺の様子を生々しく描いた絵巻。まるで怒号やうめき声が聞こえてくる〝実況中継〟のような迫力で、見るものの胸に迫ってきます。さらに証言や当時の新聞記事、地図やグラフを示した説明文などの展示が続き、一通り見終わった頃には手にじっとりと汗をかいていました。
 先日は、千葉県のある村で起こった史実をもとにした映画『福田村事件』を鑑賞。映像による集団虐殺とそれにいたる経過や背景の描写が生々しく、本当に胸が苦しくなりました。そして物語のクライマックスで放たれた「朝鮮人なら殺していいのか!」とのセリフにハッとするとともに、心の中で「そうだ!」とも叫びました。
 多くの方たちによって、この重大な人権侵害の虐殺事件を忘れさせず、被害の実相とその責任をはっきりさせるためにと、様々なやり方で記録に残し、世の中にうったえる努力が続けられています。そんな中、日本政府がいまだ「記録が見当たらない」などと背を向け続けていることは本当に許せません。
 前述の絵巻には「此の惨禍に遭遇せざりし人々に示し、以て省慮の念を促し」たいと記されていました。つまり〝震災と事件を体験していない未来の皆さん、この姿を見てこの愚行を反省し、よく考えてほしい〟という作者の切望だと受けとめました。この約束、とくと胸に刻み今後も行動していきたいと思います。