エッセイ

2024年03月25日

赤旗日刊紙西日本のページ3月20日「水曜随想」

軍都の再来はごめん 

 標高737㍍、広島県呉市の灰ケ峰から見る市内の夜景は中国地方でも有数の絶景ポイントで、私も学生時代から友だちと何度も行った場所です。そんなよき青春が脅かされる事態が。

 防衛省が呉市の日本製鉄跡地130㌶(マツダスタジアム36個分)を一括購入し「多機能な複合防衛拠点」を整備すると発表。内容の一つに「装備品の製造基盤」の整備とありますが、まさに海軍工廠(こうしょう)の復活です。さらにヘリポートや訓練場、港湾施設を整備し、弾薬庫建設も検討中だと。

 工場でミサイルをせっせとつくり、貯蔵し、空から海からどんどん戦地に運んでいこうという絵が浮かんでくるのは私の考えすぎでしょうか。

 呉基地ではすでに護衛艦「かが」の空母化が進み、輸送艦「おおすみ」は米軍と共同で上陸作戦の訓練を行い、潜水艦の長射程ミサイル搭載が狙われ、今後1年以内に「自衛隊海上輸送群」という陸海空の自衛隊の統合司令部を配置するという、戦争準備の基地増強計画が目白押しです。その上に今度のこの計画ですから、まさに全国最大の一大軍事拠点です。有事となれば真っ先に狙われます。

 報道では「雇用創出」や「街の活性化」への期待の声を紹介していますが、そもそも軍事でにぎわうような町を子どもたちに残したいでしょうか。穏やかな瀬戸の海を軍艦が跋扈(ばっこ)し、呉の夜景に軍需工場がそびえたつ―そんな「にぎわい」などまっぴらごめんです。

 11日、呉市議会でこの問題が議論され、保守系議員らから「非常に明るいニュースだ」「この上ない喜び」「心のモヤモヤが晴れた」など賛辞の声が続く中、質疑の最後に立ったのは日本共産党の奥田和夫議員。「戦時中、軍都だった呉市は大きな空襲にあい2000人以上が亡くなった。戦後、市民が特別法を制定し平和都市として歩む決意をした。今度の計画はその歴史と市民の思いをふみにじるものだ!」と喝破。議場を圧倒しました。

 軍都再来阻止へ、多くの市民にこの計画の中身を知らせ、今こそ日本共産党を大きく!