国会質問

2016年04月25日

文科省が進めてきた生徒指導の検証を(4月6日文科委員会)

衆議院会議録情報 第190回国会 文部科学委員会 第4号

○大平委員 日本共産党の大平喜信です。
 きょうは法案の審議ではありますが、冒頭に、若干の時間を使って、昨年十二月、広島県の府中町で男子中学生が自宅で自死をするという大変痛ましい事件が起きたことにかかわって質問したいと思います。
 亡くなった御本人と御遺族の方に対して、まず冒頭、心から哀悼の念を申し上げたいと思います。
 実は、府中町は私自身の居住地でもありまして、ことし中学生になる息子がこの新年度から通う学校でもあります。あしたは入学式も行われるということになっております。
 この間、御近所で子供を通わせているお父さんやお母さんたちからもお話を聞きました。下の子も入学するし、これからどうなるのか、とにかく先生が忙しそう、もっと子供と向き合ってほしいなど、さまざまな不安の声が寄せられております。私自身も、保護者の一人として、御近所の皆さんとともに、深い悲しみと不安な思いを抱えながらあしたを迎えようとしております。
 何よりも、御遺族の方たちの思いに心から寄り添い、その思いに応えるという姿勢で今後の取り組みは行わなければなりません。
 御遺族が地元紙の中国新聞に寄せた手記には次のように述べられております。一部の引用ではありますが、紹介したいと思います。「どうしたら大切な子供を守れるか。学校という組織の実態が伝わることによって、改善され、生徒が内申点にとらわれ過ぎない、弱い立場の者が守られる社会になってほしいと願っています。」「学校はこのことについて何がいけないのか、なぜこのようなことが起きたのか明確に示してこないまま前に進もうと言うのは順番が違います。」「学校、教育の現場のずれた感覚を改善するすべがあるのか分からないほど、根が深いものだと痛感しました。」など、るる述べておられます。大変強い不信感を抱えておられます。
 そこでお尋ねしますが、先月末には、事実の究明などを進めるために第三者委員会が立ち上がりました。今後、こうした御遺族の意向に沿った徹底した調査が求められていると考えますが、大臣の御所見をお伺いします。
○馳国務大臣 文部科学省が策定した子供の自殺が起きたときの背景調査の指針においては、自殺の調査に当たっては、「遺族が背景調査に切実な心情を持つことを理解し、その要望・意見を十分に聴き取るとともに、できる限りの配慮と説明を行う」こととしております。
 現在、府中町教育委員会で行われている外部専門家による調査においても、同指針にのっとって、事実関係と真摯に向き合い、御遺族の要望に十分配慮していくことが強く望まれると考えております。
○大平委員 よろしくお願いしたいと思います。
 亡くなった男子中学生は、どうせ言っても先生は聞いてくれないという思いを以前から保護者に話していたとのことでした。本当に重く受けとめなければいけない言葉だと思います。
 二度とこのような悲しい事件を、当該中学校はもとより全国のどこでも繰り返させてはならないし、そのためには、今度の事件がなぜこの中学校で起きてしまったのか、その事実の究明、そして、彼の言葉にあるような、どうして先生と生徒の信頼関係が築けてこれなかったのか、学校と教育行政の対応のあり方を含めて徹底的に明らかにする必要があると思います。だとすれば、単に校長や教員の不適切な対応の指摘や責任追及だけに終わらせず、その背景にある根本的な原因にまで踏み込んで明らかにすることも必要不可欠だと考えます。
 お尋ねしますが、昨年十二月に事件が起きて、公表されるまでの三カ月の間、学校はもとより、町教委と県教委も、担当者を学校に派遣し、状況をつかみ、ともに対応に当たってきました。さらに、県教委は、当該中学校を以前から県の生徒指導の指定校にもしておりまして、事件以前の状況も日常的にもつかんできたと思います。そうした点からすれば、今後、当該中学校の対応とともに、町教委そして県教委のこれまでの対応についても調査が必要であると考えますが、大臣の見解をお伺いします。
○馳国務大臣 調査の対象については、調査組織の設立主体や調査組織自身において判断されるべきものであります。
 現在行われている、第三者によって構成された府中町学校運営等についての調査検討委員会においては、自死の背景及び原因、再発防止策のみならず、当該学校及び町教育委員会の対応についても調査検討がなされるものと聞いておりますが、町教育委員会を指導する県教育委員会も、必要に応じ検証の対象になり得ると考えております。
○大平委員 それぞれの教育行政機関が我がこと、我が問題として今度の問題を捉え、今後の教訓にしていくという立場に立つことが再発防止策を講じていく出発点になると私は考えております。
 さらにお伺いします。
 二月の二十九日に発表された当該中学校が行った調査報告では、当時の制約があったことも承知をしておりますが、教員からの聞き取りのみで作成をされております。子供たちからの聞き取りは行われていないものでございます。
 真相の解明のためには、当然、子供たちから直接聞くことが必要不可欠だと考えますが、大臣、いかがでしょうか。
○馳国務大臣 子供への聞き取り調査等の実施については、府中町学校運営等についての調査検討委員会において、文部科学省が策定した子供の自殺が起きたときの背景調査の指針にのっとって、その必要性や方法等について適切に判断がなされるべきものと考えております。
 この指針においては、子供に調査への協力を求める場合は、子供の心への影響からも、調査は専門的な見地から適切かつ計画的に実施されるべきこと、調査への参加を無理強いせず、子供や保護者の意思を尊重すること、心理の専門家等による相談体制の確保やケア体制をあらかじめ確立しておくことなどに配慮が必要であることが示されております。
 当該学校においては生徒を対象としたアンケート調査を実施しておりますが、聞き取り調査など、さらなる生徒を対象とした調査の実施に当たっては、当該アンケート調査の結果などを踏まえ、適切に判断がなされるべきものと認識をしております。
 また、当該生徒は当時中学校三年生でありました。今は同学年の生徒は、卒業し、高校生になろうとしておる段階でありますので、当該学校にはおられません。したがって、こういう事情も踏まえて、指針に沿って適切に配慮がなされるべきと考えております。
○大平委員 やはり、第三者委員会の姿勢として、子供たちの生の声を聞くという姿勢をぜひ持っていただきたいというふうに思います。
 四月一日付の中国新聞では、御遺族の方の第三者委員会に対するコメントとして、「大人としての見地からのみならず、十五歳の目線からの検討を試みていただきたい」と述べておられます。こうした声にも応えて、先ほど大臣からありましたアンケートと同時に、子供たちから委員の皆さんが直接聞くということも含めて、ぜひ行っていただきたいというふうに思います。
 既にこの間の調査報告などでも明らかになっているところでも、今度の事件で自死に至ってしまった原因の一つとして、高校入試への推薦・専願基準の問題が挙げられています。つまり、三年間で一度でも万引きなどを行えば推薦はしない、こうした基準の問題です。
 文科省は、タスクフォースの中間取りまとめの中で、その基準が曖昧で、変更を徹底するのもおくれた、だからもっと明確にしなければならないと述べておりますが、私は、そもそもこの基準そのもの、もっと言えば入試制度のあり方自体がどうだったのか、どうあるべきなのか、これを正面から問わなければならない、そういう事案ではないかというふうに考えますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
○馳国務大臣 進路指導は、生徒の能力、適性等を見きわめ、生徒が自主的に進路を選択して自己実現を図れるようにするために必要な能力、態度を育成することを目的としており、各学校の実情に応じて適切に行われるべきものと認識しております。
 このたび、広島県府中町で生じた生徒の自殺事案に対応するため、文科省にタスクフォースを設置し、先月末に中間取りまとめをまとめたところであります。
 具体的には、府中町の中学校では、生徒の将来に重要な影響を与える進路決定を行う際に、一年生時の触法行為のみをもって機械的に判断が行われたことや、変更後の推薦・専願基準が遡及的に適用されたことなどに課題があったことから、推薦・専願基準に関しては、今後、文言の明確化や適正化を図るといった基準の見直しを行うとともに、変更の手続や時期、周知の方法など基準の運用プロセスの見直しを行う必要がある旨示したところであります。
 さらに、各都道府県教育委員会等に対しても、生徒指導、進路指導に係る確認事項を示し、所管の学校等において確認するなど適切な対応をお願いしたところであります。
 文科省としては、府中町教育委員会が設置した第三者委員会における全容解明等の結果なども踏まえて、府中町はもとより全国的な生徒指導、進路指導の改善充実につながるように、必要な政策を推進してまいりたいと思います。
○大平委員 私は、たった一回の過ちをもって、三年間の総仕上げとして希望する進路の道が断たれてしまうという、このあり方が果たして中学校という教育現場であるべき進路指導なのか、こういう点を含めて、推薦制度のあり方を根本から見直す必要があると感じております。
 この問題の質問の最後です。
 調査報告の「結びに」の中で、当該中学校の校長先生は、本校の生徒指導が「規律維持を求めるあまり、押さえつける指導になっていたのではないか、過ちを犯した生徒や反抗的な生徒を排除するような指導になっていたのではないかと、猛烈に反省しております。」と述べています。
 真相究明はこれからだと思いますが、この校長が猛烈に反省しているとした、規律で抑えつける指導、排除する指導となってきた背景には一体何があったのか。県の生徒指導の指定校として長らく当該中学校の実践が行われてきたことからしても、私は、広島県教委や、あるいは文科省自身も、これまで推進してきた、ゼロトレランス方式とも言われるような、規律を何よりも重視する生徒指導のあり方がその背景にあったのではないか。
 ぜひこの機会に、大臣、文科省も、みずから示してきた生徒指導のあり方がどうだったのかについての検証を行うべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○馳国務大臣 生徒指導は、一人一人の児童生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めるよう指導、援助するものであり、適切な児童生徒理解を基本に学校全体が組織的に対応することが重要であります。今回の事案においては、学校の組織的対応がとられていなかったこと、情報管理が不徹底であったことなどの課題が確認をされております。
 進路指導の目的は、生徒の能力、適性等を見きわめ、生徒が自主的に進路を選択して自己実現を図れるようにするために必要な能力、態度を育成することにあります。今回の事案では、進路指導上の重要な情報を伝える時期や方法について十分な配慮や適切な環境の確保がなされなかったなど、不適切な進路指導が行われたことが課題であると認識しております。
 文部科学省は、府中町自殺事案に関するタスクフォースを立ち上げ、これらの課題及び課題解決に向けた方向性について中間取りまとめを行い、各都道府県教育委員会などに通知したところであります。
 府中町における全容解明等の結果なども踏まえて、全国的な生徒指導、進路指導の改善充実につながるよう、必要な政策を推進してまいりたいと思います。
    〔委員長退席、木原(稔)委員長代理着席〕
○大平委員 大臣、私が伺ったのは、真相究明はもちろんこれからだと思いますが、それも含めて、文科省自身が進めてきたこの間の生徒指導に問題があったのではないか、そこの見直しの検証をみずから行うべきじゃないかという質問をしました。
 馳大臣がこのタスクフォースの会議の第一回のときに意見、指示として述べている、より根源的な対策、取り組みについてまとめよという指示をされたというのも見ました。私は、この指示というのはそういう問題意識なのかと思いましたが、もう一度お答えいただけますか。
○馳国務大臣 文科省としてのこれまでの取り組みについて私はもちろん否定するものではありませんし、今回の事案を具体的な事案として踏まえて私が指示をしたことはこういうことであります。
 管理型というふうな教育は、現場に参りますと、児童生徒あるいは保護者、また教職員等を取り巻いておる連携などを看過せずに、一方的に指導、管理さえすればそれでよいのではないかという間違った認識がとられる場合があるのではないか。そうではなくて、なぜこういうことをしてはいけないのか、いけないことをした場合の自覚を促し、改めるような態度も促し、当然、その後の成長を見守ることも教職員の責任であり、また管理職の責任であると思います。同時に、それについては、教員が、中学生ですから教科担任制ですから、各教科の先生方の情報も集めながら、十分にやはり成長を認めることができるか、その成長を支えていくことが教職員としての役割である、私はそういう認識を持っております。
 したがって、管理型という、言葉とか表現を本当に上から抑えつけるような形で、児童生徒の意思や保護者の意見も全く取り入れずにやってよいと思っていたらまさしく大間違いであります。
 私は、今般の事案は大変重大な事案である、なぜならば、その指導を受けて、その指導を踏まえて、児童生徒が大きな心の揺れ、それが今回の自死につながったのではないか、こういうふうに言われておる中での反省を踏まえなければいけないと思っております。
 したがって、改めて申し上げれば、全国の、特に進路指導にかかわる中学校の先生方には、今回の関係者がどの段階でどのようなことが行われていてこういう結果になっていってしまったのかということをまず十分に見た上で、そして理解した上で、二度とこのようなことを起こさせない、そのような指導のあり方についてよく考えて対応していただきたい、そういうふうに考えており、まずは中間報告、そして第三者調査委員会の報告も受けて、最終的に、我々も見直すべきは見直したいと思います。