国立大学の学長選挙廃止強要や押し付け改革はやめよ(5月11日文部科学委員会 質問・討論)
衆議院会議録情報 第190回国会 文部科学委員会 第7号
○大平委員 日本共産党の大平喜信でございます。
きょうは、国立大学法人法改正案にかかわって、幾つか質問をしていきたいというふうに思います。
法案では、第三十四条の六に、指定国立大学法人の「中期目標に関する特例」が設けられております。もともと国立大学の中期目標は、法律上は文部科学大臣が定めるとされていますが、憲法二十三条に由来する大学の自治を踏まえて、文科大臣には国立大学からの意見、原案ですね、これに配慮する義務が課されております。中期目標の実際上の作成主体は国立大学法人だと解されてきました。
そこで確認ですけれども、指定国立大学法人の中期目標も同様に、文部科学大臣には国立大学からの意見に配慮する義務が課され、中期目標の実際上の作成主体はあくまでも指定国立大学法人であるということで間違いありませんね。
○馳国務大臣 国立大学法人の中期目標については、国立大学法人法第三十条第三項において、文科大臣は中期目標を定め、またはこれを変更しようとするときは、あらかじめ国立大学法人等の意見を聞くこととされております。
また、国立大学法人法附帯決議において、実際上の作成主体が法人であるとされているところでありまして、指定国立大学法人についてもこれを変更するものではありません。
○大平委員 そんな中、今度の法案では、指定国立大学法人の中期目標を定めるに当たって、先ほどの第三十四条の六、「世界最高水準の教育研究活動を行う外国の大学の業務運営の状況を踏まえなければならない。」としています。
この踏まえるというのはどういうことか。世界に名立たる外国の大学の業務運営を同じようにまねをしろということを文部科学省は求めているんでしょうか。お答えください。
○常盤政府参考人 お答え申し上げます。
国立大学に関しましては、各大学、学部ごとに、強み、特色、社会的役割を整理いたしますミッションの再定義を行うことなどによりまして、機能強化を進めているところでございます。
特に、今回の法制度によりまして指定を受ける国立大学につきましては、海外の有力大学と競い合える卓越した研究分野を既に備えて、その強みを伸ばしていくということが基本となると考えてございます。
ただ、その一方で、外国大学の業務運営の状況を踏まえるといたしておりますのは、我が国の国立大学においては、やはり課題が一方でございます。新領域や学際的領域の開拓であるとか、社会連携やガバナンスの強化、こういうところは我が国の国立大学において課題であるというふうに考えてございます。
そういうことがございますので、指定国立大学が海外の有力大学の状況について分析を行って、その内容を参考といたしまして目標や取り組み構想を策定するということを想定しているということでございます。
○大平委員 この間の説明でも、指定国立大学の指定はあくまでも大学からの申請に基づくものだということや、大学みずからが伍していこうとする海外大学の取り組みをベンチマークとして設定する、そんな説明がありました。あくまでも各大学が自主的に外国の大学の状況を踏まえて検討するんだ、そんな説明だったかと思います。
みずからが伍するとか大学が自主的に、そういうことを一方で言いながら、しかし、今度の法律で新たに、世界最高水準ということも明記しながら、細かく項目も提示して、これでなければ認めないというふうにするものであります。
大臣、これはまさに政府、文科省が上からの関与を強めて大学の自主性を侵害するものではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○馳国務大臣 指定国立大学法人の指定を受けようとする法人には、申請に当たって、人材育成・獲得、研究力強化、国際協働、社会連携、ガバナンスの強化、財務基盤の強化の、六つの観点についての目標設定や構想の提出を求めることとしておりまして、指定された場合は、これらの内容について各法人の中期目標に反映することとなります。こうした指定や中期目標への反映の手順においては、現在の国立大学法人の中期目標の作成プロセスと同様のものとすることを考えています。
指定は、各法人の主体的意思による申請に基づくものであります。法人の意に反して文科大臣が一方的に中期目標を変更することは考えておりません。したがって、法人の自主性を侵害するものではありません。
〔山本(と)委員長代理退席、委員長着席〕
○大平委員 大臣は、これまでと同様にやるんだというふうな答弁でありましたが、しかし、今度の法案で新たに六つの項目を具体的に並べて、海外の名立たる大学をベンチマークに設定するということも新たに述べながら、中期目標への反映もしていくんだ、こういうたてつけになっているわけです。
そもそも、外国の大学と日本の大学では規模や歴史も違う、ベンチマークとして設定すること自体がどれだけ意味のあることなのか、私は極めて疑問を感じずにはおられません。大学がみずから高い志や目標を持つこと自体は否定はしませんけれども、それを上から押しつけるようなやり方はとるべきではない、このことはきちんと指摘をしておきたいと思います。
先ほども大臣の答弁でありました、六つの柱というのが今回挙げられております。その一つのガバナンスの強化、学長の指導性の発揮の問題について質問を続けたいと思います。
この問題は、既に幾度となく強調され続けてきたことであり、この間、学長裁量経費など、こうした仕組みの新設も含めて、学長の権限は大きく強められてきております。そして、今度の法案で、その強化がさらに求められているのであります。
この点で、とりわけ現場で危惧をされているのは学長選挙の問題です。現在、多くの大学では、学長選考過程において教職員の学長選挙が行われています。
そこで、確認ですけれども、二〇一四年八月二十九日発出の学校教育法改定案の施行通知、その中の「二 国立大学法人法及び同法施行規則の一部改正」の(一)、学長選挙にかかわる部分に何と書いてあるか、紹介していただけますか。
○常盤政府参考人 お答え申し上げます。
一昨年八月二十九日付の学校教育法及び国立大学法人法の一部改正法及び同施行規則の一部改正省令の施行通知でございます。
今御指摘のあった部分でございますが、少々長くなりますが、記述内容を読み上げるようにということでございますので申し上げますが、意向投票に関しまして、
学長等選考会議は、候補者の推薦への関与、所信表明の機会の設定やヒアリングの実施、質問状の公開など適切な方法を通じて、主体的な選考を行うこと。なお、選考の過程で教職員による、いわゆる意向投票を行うことは禁止されるものではないが、その場合も、投票結果をそのまま学長等選考会議の選考結果に反映させるなど、過度に学内又は機構内の意見に偏るような選考方法は、学内又は機構内のほか社会の意見を学長又は機構長の選考に反映させる仕組みとして設けられた学長等選考会議の主体的な選考という観点からは適切でないこと。
と記述されております。
○大平委員 ちょっと、後半部分はまた後で取り上げたいと思いますが、つまり、確認ですが、学長選挙そのものは禁止されていませんね。確認です、もう一度。
○常盤政府参考人 ただいま申し上げましたとおり、この通知の中では、選考の過程で教職員によるいわゆる意向投票を行うことは禁止されているものではないが、その場合も主体的な選考を学長選考会議が行うということを求めているものだと思っております。
○大平委員 確認しました。
そこで、さらに伺います。
今度の法案において、指定国立大学の指定の際、また中期目標の作成の際に、六項目の一つに挙げられているガバナンスの強化の内容として、学長選挙をやめなければ指定を認めないということになるのかどうか。確認です、いかがですか。
○常盤政府参考人 指定国立大学法人の指定のあり方については、有識者会議で御議論をいただいてきたところでございます。
この有識者会議では、「教育研究環境の充実のために改革を進め、資源を最大限活用し、透明で効果的な運営を行い、学内外から信頼されるガバナンス体制を構築すること」を目指すべきとされております。そして、その際、指定国立大学が備えるべき要素として、今御指摘ございましたように、ガバナンスの強化ということが六つの柱の中の一つとしてございます。
ガバナンスの強化に関しましては、「指定国立大学としての取組を進めていくためには、リーダーシップのある学長が安定的に大学運営を推進できるなど、当該大学の特性に応じた工夫が必要」となり、学長の「任期、選考の在り方や、学長選考会議、経営協議会及び監事を含めた学長のチェック機能の強化など、ガバナンスの強化を自律的に推進する。」ことが必要であるというふうにされております。
こうした観点を踏まえまして、指定国立大学法人制度に申請する大学におきましては、意向投票の実施の有無は各大学の判断によるものでございますけれども、それぞれの特性に応じたガバナンス強化に資する取り組みを行って、「学長のリーダーシップの下、教育研究において強みや特色を発揮し、社会的な役割をより良く」果たしていくこと、こういうことが期待されているというふうに考えております。
○大平委員 各大学の判断だということで、答弁を確認しました。
私、大臣にも同じことを確認しておきたいと思うんです。最終的に指定国立大学を指定するのは文部科学大臣であるということです。その際に、学長選挙をやめさせるというような介入をすることはありませんね。確認です。
○馳国務大臣 昨年、学校教育法が改正され、ガバナンスの改革がなされたところであります。特に学長選考においては、意向投票が学長を選ぶための実質的な選挙として機能して、票読みや教員間のさまざまな働きかけなど、国立大学のリーダーを選ぶにはふさわしくない行為が行われてはならないと考えております。
指定国立大学法人制度に申請する大学においては、意向投票の実施の有無は各大学の判断であります。大学をリードしていくにふさわしい者が学長選考会議において主体的に選考されるよう、大学人としての見識を十分発揮されることを期待したいと思います。
○大平委員 意向投票の有無は各大学の判断だという御答弁を確認しました。
しかし一方で、この問題で私が危惧をしているのは、ある新聞で馳大臣が次のように述べておられたことです。
学長や学部長、病院長などを決める際、組織内で意向投票をしている大学は、ガバナンスの観点から、改革の意思があるのか疑問だと。運営費交付金の問題で問われているんですが、その配分に関しても厳しく評価すると述べておられました。大学の将来を占う重大事項である指定国立大学の指定あるいは中期目標の評価と決定ということを扱う大臣の発言として、私は決して看過できないと思いました。
そもそも、国立大学法人法案の審議の際の政府答弁でも、先ほど局長に読み上げていただきました答弁にあったような、後半の部分の制約はつけておらず、学長選考会議において定めるとしか言っていないのであります。
そして、教職員の意向を大学の管理運営に反映させることは教育研究の発展にとっても不可欠なものである、同時に、その自治のあり方は大学によって異なるものである、それは国際的にもコンセンサスになっていると私は思っています。
ユネスコの、高等教育の教育職員の地位に関する勧告を一部紹介したいと思うんです。
学問の自由の適正な享受と以下に列挙するような義務及び責任の遂行は高等教育機関の自治を要求する。自治とは、公的責任、とりわけ国家による財政支出への責任の体系に沿った学術的職務と規範、管理及び関連諸活動に関して高等教育機関が行う効果的意思決定及び学問の自由と人権の尊重、これらのために必要とされる自己管理である。しかしながら、教育機関の自治の性格は、その施設の類型に従って異なるとされているわけです。
世界のごく一部の大学のやり方に倣って各大学を画一的なものにしていくなどということは、この勧告の趣旨からも外れている。
重ねて、指定国立大学に指定する際、海外の一部の大学で学長選挙がされていないなどということを口実に、ましてや、運営費交付金を盾に学長選挙をやめさせるなどという介入は絶対に許されないとはっきり申し上げておきたいと思います。
質問を続けたいと思います。
この指定国立大学制度も、この間、政府、文科省が進めてきた大学改革の一環です。この間、政府、文科省は、ミッションの再定義あるいは運営費交付金が削減される中での三類型化、重点配分化、さらには文系潰しの通知発出などを通じて、各大学を競争させてきました。こうした大学改革や指定国立大学制度というものが果たして、そもそも大学現場から上がっている要求なのか、この根本的な疑問が私はあります。むしろ経済界からの要求ではないか。
二〇一六年二月に日本経団連が発表した「産学官連携による共同研究の強化に向けて」の中では、「政府に求められる対応」として、「運営費交付金等の重点的な資金配分。」、指定国立大学制度においては、「研究成果の社会実装の視点からの目標設定や、トップによる戦略的な資源配分を可能にする規制緩和の実現」などを求めているのであります。まさに今度の制度設計そのものだと私は思いました。
大臣、この点、いかがでしょうか。御所見をお願いします。
○馳国務大臣 国立大学については、全八十六の国立大学法人が、社会や産業構造の変化が非常に厳しい中で、それぞれの強み、特色、社会的役割を踏まえて、どのように機能を強化していくのかという議論をここ数年続けてきております。その中で、卓越した研究拠点として国際的に貢献をしていきたいという大学群が一定程度存在しているということが制度設計の基礎となっております。
また、制度設計の詳細について検討するために文科省に設置した特定研究大学制度検討のための有識者会議においては、国立大学の学長経験者、私立大学関係者、国立大学法人制度に関する有識者などの参画も得て、議論を行っていただきました。
その中で、我が国の大学が有する課題、大学が国内外から優秀な学生、教員を獲得する上で必要な視点、人材育成、研究力を強化するために必要な取り組みなどなど、さまざまな観点から意見をいただいて、それらを踏まえて制度の検討を行っておりまして、大学界の意向を反映したものであります。
○大平委員 現場の実態がどうなっているのか、大臣は本当にわかっておられるのかと思うわけです。
具体的な現場の声を幾つか紹介してみたいと思うんです。
当然、大臣もお読みになっていると思うんですが、文部科学省がつくられた、ことし三月発行されている、科学技術の状況に係る総合的意識調査の定点調査、この報告書とデータ集を私も読みました。現場で必死になって頑張っておられる大学関係者の皆さんの、ある意味、悲痛の叫びともいうべき声がこもごも寄せられておりました。
その中身の一部を紹介したいと思うんですが、二〇一一年から二〇一五年にかけてその指数がマイナス変化を見せた、つまり、この期間の中で悪化した項目、その一番トップに来ている項目とその理由、何と書いてあるか、紹介していただけますか。
○伊藤政府参考人 御指摘の調査においては、回答者に対しまして、「研究開発にかかる基本的な活動を実施するうえでの基盤的経費の状況」についての認識を変更した理由を聞いております。
その理由の例といたしましては、「学長裁量経費への重点化がなされたので、部局や各教員へ配分される基盤的研究費が減額になった 運営費交付金が経時的に大幅に減額される中で固定費まで切り込んで対応せざるを得ない 実験系の研究活動を維持するのに必要な額を下回っている等」が挙げられているところでございます。
○大平委員 学長裁量経費がふえたから運営費交付金が減ったという声でした。
この定点調査のデータ集の中でも、例えば、「運営費交付金の定期的削減に加え、学長裁量経費への一定枠の吸い上げが義務付けられ、基盤経費のさらなる削減が行われました」など、同様の趣旨の声が具体的にたくさん書かれておりました。
運営費交付金が減る中で、各大学は競争的資金や外部資金を獲得しなければなりません。文部科学省もそうするように勧めてきました。その結果、ではどうなったのか。先ほどの定点調査の指数悪化トップテンの五番目の項目とその理由を示していただけますか。
○伊藤政府参考人 御指摘の点につきましては、回答者に対しまして、「将来的なイノベーションの源として独創的な基礎研究が充分に実施されているか」について、認識を変更した理由を聞いているものでございます。
その理由の例といたしまして、「大学における成果重視の傾向が強まり、研究分野が画一化しつつある。 大学にますます自由や余裕が無くなっている(基盤的研究費の減少、各種大学改革による疲弊、制度に振り回されている) 長期的な視点に立った基礎研究が行いにくい環境になりつつある。 独創的の評価には時間がかかるので、長期的な支援が必要等」が掲げられているところでございます。
○大平委員 この項目についても、データ集ではこんなことも書かれております。「イノベーションが経済成長の脈絡で主張されており、基礎研究の多様性を阻害している」、「予算の重点化とともに、短期的な視点に触れてきている」、さらには、「各種の大学「改革」による疲弊によって大学の研究力が落ちている」、こういうものまであるわけです。結局、短期的に成果を出さなければいけないので、目先のものに追われ、長期的な研究ができないでいるのであります。
文科省は、しきりにイノベーションのための指定国立大学とおっしゃられるんですが、こんなことをしておいて、イノベーションがどうして生まれるのかと感じずにはおられません。
さらに、定点調査の指数悪化トップテンの八番目には、「研究時間を確保するための取り組みの状況」が挙げられており、「大学改革のための会議や、大学評価への対応、外部資金獲得の申請書書きなどで、教員、研究者がますます忙しくなっている 中期目標中期計画の策定でマネジメントなどの時間が増えている」、こうした声が寄せられているわけであります。
るる紹介してきましたが、これらは研究環境や基礎研究など、いずれも、文部科学省が言う世界最高水準の教育研究にとって最も重要な部分です。それが現場の感覚では近年悪化をしており、そして、その理由が運営費交付金の削減と大学改革が原因だと、現場で取り組んでおられる方たちが口をそろえて述べているわけです。
さらに伺います。
運営費交付金の削減と大学改革の結果、国立大学や日本の学術研究の成果がどうなっているのか。
文部科学省の科学技術・学術政策研究所が出している科学技術指標二〇一五によると、整数カウント法での論文数、トップ一〇%補正論文数、トップ一%補正論文数の順位が、二〇〇一年から二〇〇三年と二〇一一年から二〇一三年とで比べてそれぞれどうなっているか、お示しいただけますか。
○伊藤政府参考人 御指摘の、科学技術・学術政策研究所が発表しております科学技術指標二〇一五によれば、まず論文数についてでございますけれども、日本の順位は、二〇〇一から二〇〇三年の平均で世界第二位でございましたが、二〇一一から一三年の平均では世界第五位となっております。また、トップ一〇%補正論文数につきましては、二〇〇一年から二〇〇三年で世界第四位であったものが、二〇一一から一三年では世界八位となっております。トップ一%の補正論文数につきましては、二〇〇一年から三年で世界第五位であったが、二〇一一から一三年では世界十二位となっているところでございます。
○大平委員 いずれも軒並み下がっているのであります。明らかに運営費交付金が減ったことが最大の原因であり、しかも、それが、この間、大学間だけでなく、大学内部での重点配分ということにしてきたからであります。
現場からこうした痛烈な意見が出ている。文部科学省自身もそう分析している。そして、実際の指標も軒並み下がっている。それなのに、今度のこの指定国立大学制度で、なお一層、それに逆行する方向を進めようとしている。
私は、まさに文科省がやっているのは、お金は出さないが口は出すということではないかと感じずにはおられません。今何よりもやるべきことは、大臣、運営費交付金をもとに戻して、さらにふやしていくことではないか。いかがでしょうか。
○馳国務大臣 国立大学は、我が国の高等教育や学術研究を牽引する重要な役割を有しているという認識を持っております。
現在、学術研究、基礎研究の推進も含め、機能強化のための大規模な改革を進めております。国立大学の機能を十分に発揮させるためには、また、教員が安心して教育研究活動を行えるようにするためにも、基盤的経費の安定的な確保が必要であります。このため、国立大学法人の第三期中期目標期間初年度である平成二十八年度予算では、国立大学法人運営費交付金を対前年度同額の一兆九百四十五億円を確保したところであります。
文科省としては、引き続き、国立大学の機能強化のため、基盤的経費の確保に努めてまいりたいと思います。
○大平委員 運営費交付金の安定的確保が必要と大臣はおっしゃられるんですけれども、先ほど来も質疑の中でありました、実際この間の動きを見ますと、法人化以降は毎年一%ずつずっと減らされている、今年度も、重点配分で、少なくない大学が減っている、これが紛れもない事実であります。
私の地元中国地方、中国五県の国立大学は全て減額であります。ある学長さんは、これではいずれ教職員を五十人は削らないといけないとおっしゃっておられました。こうした中で、次は学内での重点配分を進めろと。これでは一層大学の疲弊が進むのは目に見えているではありませんか。
こうした方向に決して未来はない、安倍政権による上からの押しつけ大学改革はきっぱりやめて、運営費交付金の抜本的拡充を行うよう強く求めて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
衆議院会議録情報 第190回国会 文部科学委員会 第7号
○大平委員 私は、日本共産党を代表して、国立大学法人法の一部を改正する法律案に対し、反対の立場から討論します。
本法案は、安倍政権が掲げる経済の成長戦略の一環として、企業の投資対象として魅力的な、グローバルな競争力を有する国立大学をつくり出すことが目的です。
本法案で創設される指定国立大学法人制度で、文部科学省が、指定された国立大学に、特定の研究分野で海外の大学をモデルとした目標の設定を迫り、大学運営全体において、その分野を支える体制の構築、外部資金獲得や産学連携に駆り立てることとなり、その他の学問、研究分野の切り捨てにつながりかねません。
そもそも、大学のあり方、目標の策定は大学みずからが自主的、自律的に決定すべきもので、法律で世界最高水準の海外の大学をモデルにするなどと規定すべきではありません。本法案により、大学運営全般にわたり、今まで以上に文部科学省の関与が強化され、大学の自主性、自律性がないがしろにされます。
既に政府は、今年度からの第三期中期目標期間から、国立大学を、地域貢献、特色ある分野の教育研究推進、海外大学と伍する教育研究推進の三類型に分け、基盤的経費である運営費交付金の重点配分を始め、大学間競争を促進しています。指定国立大学を、政府、財界・大企業言いなりの大学のトップランナーにして、高等教育全体を産業競争力強化、企業の稼ぐ力を高めることに従属させるもので、容認できません。
本法案は、国立大学の資産運用の規制を緩和することで自己収入を増加させようとしています。昨年十一月の財政審建議では、国立大学について、「民間資金の導入などを進め、今よりも国費に頼らずに自らの収益で経営する力を強化していくことが必要」と述べており、今後、運営費交付金の削減につながる可能性があります。この間の運営費交付金の削減で、人件費や基盤的教育研究費に深刻な影響が及び、国立大学としての機能を維持することが困難な状況にあります。地方の国立大学の切り捨てにもつながりかねません。
国が行うべきは、法人化以降減り続けてきた運営費交付金の抜本的増額です。財政基盤を大学みずからに確保させることは国の高等教育に対する責任を放棄するもので、容認できないことを申し上げ、討論とします。