国会質問

2016年12月23日

財務省の教職員削減方針を批判(11月25日文部科学委員会)

衆議院会議録情報 第192回国会 文部科学委員会 第8号

○大平委員 日本共産党の大平喜信です。
 私は、中国地方を回っておりまして、住民の皆さんや自治体の皆さんからさまざまな要望をお聞きするわけですが、その中でも多いのが、学校施設整備に関する要望です。
 配付資料の一枚目をごらんいただけるでしょうか。
 これは鳥取市のある小学校の校舎の写真です。この校舎は、耐震補強工事は終えたものの、ごらんのように、老朽化で外壁のコンクリートが剥げ落ちた箇所を赤い塗料を塗って応急手当てをしているところです。校長先生も、いつ外壁が落ちてくるのか、子供たちに万が一のことがあったら、そういう心配の声を寄せられておりました。
 また、トイレの改修の要望も数多く寄せられております。古い汚い学校のトイレには行きたくない、こうして困っている子供たちの話をたくさん聞きます。特に洋式トイレへの改修を望む声を多く聞くわけですが、学校はその多くが災害時には避難所にもなる、こういう点からも、バリアフリーや洋式トイレへの改修は早急に求められていると思います。
 文部科学省が先日、公立小中学校施設のトイレ状況調査を実施し、結果を発表しております。その調査結果の概要を簡潔に御説明ください。
    〔委員長退席、山本(と)委員長代理着席〕
○山下政府参考人 お答えします。
 本年四月に起きた熊本地震では避難所である学校施設において和式トイレが敬遠されたことや、学校設置者のトイレ改修の需要が高まったことを踏まえまして、まずは現状を把握するために本調査を実施しております。
 その結果、公立小中学校におけるトイレの全便器数は約百四十万個であり、そのうち、洋便器数は約六十一万個、和便器数は約七十九万個でございました。また、トイレ整備に対する教育委員会の方針を聞き取ったところ、各学校で和便器よりも洋便器を多く設置する方針の学校設置者が全体の八五%でございました。
○大平委員 洋式トイレ六十一万個、割合でいいますと四三・三%でした。圧倒的な自治体、八五%が洋式トイレへの改修を進めていきたいと考えておられる、そんな調査結果が発表をされております。
 大臣にお伺いしたいと思います。
 先ほどお示ししました学校施設の老朽化対策を初めトイレの改修、さらにエアコンの設置など、子供たちの教育環境改善の事業は計画的に進めていくことが重要だと考えますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
○松野国務大臣 委員から御指摘をいただきましたとおり、学校施設は、子供たちの学習の場、生活の場であるとともに、災害時には避難所となる極めて重要な施設であります。トイレを含めた学校の老朽化の状況は極めて深刻であり、今後数十年にわたって計画的に整備を進めていくことが必要です。
 このため、文部科学省としては、老朽化対策、トイレ改修、空調整備等を含め、公立学校施設整備費等として、平成二十八年度第二次補正予算で約千四百億を確保し、平成二十九年度概算要求で千八百十一億を要求しているところであります。
 今後とも、地方公共団体が計画的に施設整備を行えるよう、必要な予算の確保に全力で取り組んでまいります。
○大平委員 御答弁にありましたとおり、大臣も、計画的に進めることが重要だ、そういう御認識だということでした。
 自治体がこうした施設整備を計画的に進めていく上で、そのネックになっているのが国の予算不足の問題です。昨年の通常国会でも、私はこの委員会で質問をいたしましたが、年度の当初予算では、自治体から寄せられた需要に応えることができず、今年度の当初予算の場合では、地方需要の約半分の一千百億円の事業が不採択になったと聞いております。
 文科省は、一千四百七億円の補正予算で地方需要には応えたとおっしゃるわけですが、配付資料の二をごらんいただきたいと思います。
 この資料は、平成八年、一九九六年以降の公立学校施設整備費予算額の推移について、文科省の資料から私の事務所で作成をしたものですが、棒グラフの青色の当初予算額は、ごらんいただいてわかりますとおり、ずっと減ってきております。平成十八年、二〇〇六年あたりからは当初予算と補正予算などの額が逆転して今日まで至っている、そういう状況であります。
 ことし五月に全国都道府県教育長協議会が行った緊急要望で、予算額の不足は年々拡大しており、全国における計画的な学校施設の環境整備に著しい支障が生じていますと指摘をしており、今年度の予算の確保とともに、来年度以降、地方公共団体の計画する事業が年度当初から円滑に実施できるよう十分な予算を確保すること、このことを求めております。
 きょうは財務省の大塚副大臣にもお越しいただきました。お伺いしたいと思います。
 公立学校施設整備事業がこうした補正予算頼みの事業になってしまっており、地方自治体が計画的に事業を進めていけないとおっしゃっている点について、いかがお考えでしょうか。
○大塚副大臣 学校施設は安全性の確保が極めて重要であるということは私どもも思っていることではございまして、地方公共団体において計画的に整備されることは重要だという認識は持ってございます。
 このような考え方のもとで、二十八年度は、当初予算で七百九億で、第二次補正予算で先般、千三百八十七億円を措置したところでございますが、十分ではないのではないかという御指摘であろうというふうに思っておりますけれども、我が国の財政状況は極めて厳しいのも一つ事実でございます。我々も、すぱっと言われただけつけることができればこんなにいいことはないと思っているわけでございますが、なかなかそれが許されない状況のもとで、とにかく補正でも何とかできる限りの手当てをしようということで、これは補正としては大分大きな額だと存じますけれども、手当てをしているというところでございます。
 この財源、ほかの事業も重要なことがいろいろございますので、その中でもこの安全性は重要でございますので、優先順位をつけて、緊要性のあるものから順次対応してまいりたいと考えております。
○大平委員 計画的にこの事業を進めていく上では、やはり当初予算がしっかり確保されることが重要である、これが地方自治体の要望であるということも重ねて訴えておきたいと思いますし、要は、副大臣もおっしゃいましたが、国民の税金をどう使うかという、この問題だというふうに私は思います。
 一つ御紹介をしたいと思いますが、山口県の米軍の岩国基地では、厚木基地からの空母艦載機移駐計画に伴って、私たち日本国民の税金を使って、総額一兆円を超える、そういう大規模な増強工事が行われております。その中で、米軍の子供たちのためにと、小学校、中学校、高等学校が基地の中に新築をされております。
 きょうは防衛省にも来ていただきました。お聞きしたいと思うんですが、岩国基地に新設された小学校、中学校それぞれの概要と建築費、延べ建築面積、一平米当たりの建築単価を御説明ください。
    〔山本(と)委員長代理退席、委員長着席〕
○谷井政府参考人 お答えいたします。
 お尋ねの、岩国基地に所在し、空母艦載機の移駐に伴って整備した米軍関係者の子弟が通う学校施設について申し上げますと、小学校、中学校、高校がございます。
 そのうち、小学校の概要は、鉄筋コンクリート造二階建ての二棟であり、その建設費のうち建築費については約九十五億円であり、延べ建築面積が二棟の合計で約二万九千平方メートルとなっております。また、一平方メートル当たりの建築単価は約三十三万円となっております。
 中学校の概要は、鉄筋コンクリート造三階建ての一棟であり、その建設費のうち建築費については約三十四億円であり、延べ建築面積は約一万三千平方メートルとなっております。また、一平方メートル当たりの建築単価は約二十六万円となっております。
 さらに、高等学校の概要は、鉄筋コンクリート造三階建ての一棟であり、その建設費のうち建築費については約四十八億円であり、延べ建築面積は約一万六千平方メートル、一平方メートル当たりの建築単価は約三十万円となっております。
○大平委員 文科省にお尋ねします。
 国が補助をするときの建築単価は幾らに設定しているでしょうか。
○山下政府参考人 お答え申し上げます。
 公立小中学校施設の施設整備における補助単価は資材費や労務費等の変動を勘案して毎年設定をしてございますが、平成二十八年度の補助単価は、一平方メートル当たり、これは小中学校校舎、鉄筋コンクリート造の場合でございますが、十七万五千九百円としております。
 なお、事業の特性等により必要な加算を行っているところでございます。
○大平委員 先ほど防衛省そして文科省からありましたとおり、米軍の子供たちの学校は日本の約二倍、それ以上ということになっておるわけです。
 通告をしておりませんが、文科大臣、この格差についてどんなふうにお感じになるでしょうか。
○松野国務大臣 所管外のことでございます。それはそれぞれの省庁の判断の中において実施をされているものと考えております。
○大平委員 岩国基地の小中学校は、当然トイレは洋式でしょう。空調もきっと完備されていると思います。私は、米軍の小中学校がぜいたくだと言いたいのではありません。軍事費や思いやり予算などの米軍関係費を聖域にしていることは問題ではありますが、米軍の子供たちにこうした教育環境を日本の税金で提供するのであれば、日本の子供たちにも当然、そして早急に同様の教育環境を整えるべきとの思いは、私は、党派を超えて皆さん共通するのではないかと思うわけです。
 日本の子供たちの教育環境を改善するために十分な予算措置を重ねて求めて、次の質問に移りたいと思います。
 財政制度等審議会は十一月十七日に、来年度予算編成にかかわる建議を公表しました。私は、それを見て強い怒りを覚えております。全国どこでも教員が足りない、先生たちは、過労死ラインで働いても、授業準備の時間すらまともにとれない、少人数学級は国民の強い要求であり、発達障害、外国人の子供を考えても教員増が急務になっている、それにもかかわらず、教員定数を四万九千人も機械的に削減するという、とても容認できるものではありません。
 私も財務省の資料を見ましたが、機械的削減という結論先にありきの、まさにデータの歪曲、論点のすりかえの連続でした。
 例えば、その資料の中に、「公立小中学校の教職員定数と児童生徒数の推移」とのグラフが掲げられていますが、文科省に確認ですが、この数字は本当に公立小中学校のみの数字でしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘の資料における教職員定数及び児童生徒数につきましては、公立小学校、中学校のほかに、中等教育学校前期課程及び特別支援学校の小学部、中学部の数字が含まれているところでございます。
○大平委員 局長の御答弁にあったとおり、義務教育は大きく分けて公立小中学校と公立特別支援学校とに分かれております。財務省の数字はそれらを総計した数字であり、それを公立小中学校のみの数字と言うのは、まさに初歩的な誤りだと言わなければなりません。
 財務省は何かといえばエビデンスを示せと数字にこだわるわけですが、ところが、自分たちが説明する番になれば、こうした数字はうその数字を示してくる。こうした対応は決して許されない、はっきり申し上げておきたいと思います。
 そこで、小中学校での通級指導教室に関する財務省資料についてお伺いしていきたいと思います。
 通級指導とは、小中学校の通常の学級に在籍し、言語障害、自閉症、情緒障害、弱視、難聴、学習障害、LD、注意欠陥多動性障害、ADHDなど、こういう障害のある児童生徒を対象にして、主として各教科などの指導を通常の学級で行いながら、障害に基づく学習上のまたは生活上の困難の改善、克服に必要な特別の指導を特別の場で行う、そうした教育形態であります。この通級指導は、アスペルガーやADHDなどいわゆる発達障害のある子供たちが急増する中で、現在ニーズが高まっており、教室が足りず、入りたくても入れない待機児童がふえております。
 財務省、財政審も、この五月には、通級指導にかかわる教員を基礎定数化するという方向を出しました。ところが、今回、一転して待ったをかけ、その理由を三つ挙げております。
 まず第一の理由は、海外では特別支援教育において学級規模と学力の間に有意な関連は見られないという研究例が多数存在するというものです。全くわけのわからない話です。
 まず、財務省が問題にしている通級指導教室というのは、学級ではありません。通級に通う子供たちは、ふだんは小中学校のそれぞれの学級で学んでいるわけです。通級は週一回、一こま程度だけ通う、そういう場になっているわけです。財務省は通級指導教室は学級ではないということを知らないのでしょうか。お答えいただきたいと思います。
○大塚副大臣 まず、先ほど、財務省が財審で出した資料はうその資料だという御指摘があったわけですけれども、これは積算の根拠の説明のところにはっきり、特別支援学校、特別支援学級含めて、それを踏まえて計算していると書いてありますので、そういううその資料ではないということははっきり申し上げておきたいというふうに思います。
 その上でですけれども、御質問の趣旨がわかっているかどうか、ちょっと私も自信がないわけですけれども、当然、御指摘のような位置づけというものはもちろん踏まえた上で、財審の資料でお示しをしておりますのは、通級指導の教室、当然通常はそれを前提にしているわけでございますけれども、そうでない方法で取り組みをされている自治体もいろいろ全国にあるという事例がございますので、そうした事例の取り組みをよく分析して、どういうやり方が最も効果的かということをいろいろ今後のために分析してみる必要があるのではないでしょうかということを提案申し上げる意味で資料をお示ししているものというふうに考えております。
○大平委員 全く質問に答えていただいていないわけですが、学級規模を問題にするわけですから、特別支援教育、通級指導教育というのは学級ではない、そのことを知ってこのことを言っているのかというふうにお尋ねしたわけです。
 さらに重大なことは、その後にあります学力、要するにテストの点数でこの問題を論じている点です。
 通級指導教室は、子供たちに教科を教えているのではありません。通級指導教室は、発達障害などの子供たちに人と人との間で生きる心地よさを伝え、ありのままの自分で大丈夫だと伝えて、人間の温かさという、まさに生きる土台、そして社会的スキルを育む場であります。だから必要とされているのであります。
 社会的スキルを育む場の必要性を評価するのになぜ学力ではかるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
○大塚副大臣 私どもも、障害を持った児童生徒への教育においては、学力面だけではなくて、情緒的、社会的な学習成果も重要であるというふうに考えてございます。
 資料でもいろいろ海外の研究事例をお示ししているわけですけれども、これも何も学力だけに焦点を当てているわけではもちろんございませんで、さまざまな形での学習成果とか達成度といったものを対象にした学術論文を紹介させていただいているところでございますので、別に学力だけを考えているということもございません。
○大平委員 財務省の第一の理由に、特別支援教育において学力の間に有意な関連は見られない、こういうふうに書いてあるから私は伺っているんですね。
 文科省にお伺いしたいと思います。通級指導教室について、先ほど述べた社会的スキルを育む力、このことに着目したデータがあれば御紹介いただきたいというふうに思います。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 文部科学省において、委員御指摘の点についていろいろ調べました。
 例えば、ある中核市におきましては、発達障害のある児童に対して通級の指導を行っているわけでございますが、その当該児童は、衝動的に行動するため、集団の中でトラブルを起こしやすいといった課題があったところでございますが、この通級による指導によりまして、ロールプレーを通じた怒りのコントロールを初めとするソーシャルスキルトレーニングを実施するなど、児童が集団に参加する手順や決まりを理解するための個別の指導を行ったわけでございます。
 その結果、この児童は、非常に落ちついて、授業に参加できるようになったのみならず、友達を褒めるとかあるいはルールを守るといった、委員御指摘の社会的スキルの改善につながった次第でございます。
○大平委員 御答弁ありました、友達を褒める、ルールを守る、そのほかにも、葛藤の解決とかあるいは主張性、いずれも、よりよくこの社会で生きていく上での大事な力であり、そのいずれもが、通級指導に通う中で育まれているという文科省の重要なデータが示されております。
 テストの点数ではかるこの財務省の視点、視野がいかに狭いもの、いかに滑稽なことであるかということも私は浮き彫りになっているというふうに思います。
 財務省が挙げている第二の理由は、通級指導に関する教員一人当たり児童生徒数は都道府県別で最大で十五倍もの差というものです。
 財務省財政審の資料では、山梨県の中学校は三十人の生徒を一人で見ているとありますが、文科省にお尋ねします。山梨県の中学校では三十人の生徒を何人の教員で指導していますか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘の事柄につきまして、文部科学省から山梨県教育委員会に確認をしたところ、当該調査時点におきましては、三十人の生徒につきまして、中学校に配置されている担当教員一名と特別支援学校に配置されている担当教員一名の合計二名の教員で指導を行っていたということでございます。
 通級による指導を受ける児童生徒は小中学校に在籍いたしますが、通級による指導の担当教員を特別支援学校に配置して、特別支援学校に設置されている通級指導教室に小中学校の児童生徒が通う場合、あるいは特別支援学校に配置されている担当教員が小中学校に赴いて指導するといった場合もございます。
 委員御指摘の財政制度審議会の資料におきましては、特別支援学校に配置されております担当教員一名が計算に含まれていないものと承知しております。
○大平委員 財務省、これは三十人に二人で間違いないですよね。御見解をお尋ねします。
○大塚副大臣 これは、出典は、文科省の「平成二十七年度通級による指導実施状況調査結果について」というところの教員数のデータをもとに割った数字をもとにつくったグラフであるわけでございますので、山梨県は御事情で特別支援学校から一人教員がサポートに回られている、そういう事情まで反映した数字になっているわけではございません。
○大平委員 訂正をしていただきたいと思います。三十人の児童を二人で見ているというのが山梨県の実態だということであります。
 第三の理由は、外部人材を活用することで通級指導教室を設置していない自治体もある、先ほど副大臣が御引用されたことかというふうに思います。
 では、通級指導教室を設置していない自治体は通級指導教室が必要ないと言っているのでしょうか。財政審建議でも引用されている「発達障害のある児童生徒の指導等に関する全国実態調査」ではどうなっているか、文科省、お答えください。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘の、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所が実施いたしました「発達障害のある児童生徒の指導等に関する全国実態調査」におきましては、通級指導教室を設置していないと回答いたしました三百九十七自治体から、通級指導教室の必要性について回答のなかった十九自治体を除いた三百七十八自治体のうち、その五八・二%に当たります二百二十自治体が、通級指導教室が必要だが現在は設置していないという回答をしております。
○大平委員 約六割の自治体が、必要だが現在は設置していないというふうに回答している、そういう御答弁でした。
 同じ調査でさらに伺います。「発達障害のある児童生徒の今後の指導等について」の中で挙げられている課題の中で一番多かった項目はどういう項目でしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 委員お尋ねの、発達障害の関係の調査におきまして、発達障害の診断、判断がある、または可能性のある児童生徒の通級による指導における課題と考えられることにつきまして、九項目を示して、重要だと考える順に一位から九位までを選択するよう求めたところ、一位として選ばれた選択肢の中で最も多かったのは、必要とする児童生徒数に見合う通級指導教室の新設及び増設でございまして、全体で千二百十七自治体の回答の中から、今申し上げたところは、四百四十二の自治体が今の点について回答しているということでございます。
○大平委員 通級指導教室の新設及び増設が今後の指導について一番求められていることだ、そういうデータでした。
 この調査の「考察」では次のように書かれておりました。現状としては通級による指導を受けている児童生徒は発達障害のある児童生徒全体の二割に満たない、通級指導教室の設置に関しては明らかに少ないことは事実である、十分な数の設置が強く望まれるとされております。
 さらに言えば、この調査は、発達障害、自閉症やアスペルガー症候群その他の障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、ADHD、こうしたものを対象にしたもので、通級指導そのものは、ほかにも、言語障害や難聴、弱視、肢体不自由、病弱、身体虚弱なども対象にしています。これらの障害での通級指導を受ける子供たちの数の推移を紹介していただけるでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 通級による指導を受けている児童生徒のうち、言語障害、難聴、弱視などの児童生徒数の合計につきましては、近年、やや増加の傾向となってございます。例えば、平成二十三年のデータとしては三万三千七百八十八名だったのが、平成二十七年には三万七千五百七十八名ということでございます。また、これらの児童生徒は、通級による指導を受けている児童生徒全体の約四二%を占めておりまして、平成五年の制度創設時と比べると三倍以上に増加しております。
 通級による指導は、発達障害のみならず、ほかの障害のある児童生徒にとっても非常に重要な役割を果たしていると考えております。
○大平委員 局長の御答弁があったとおり、発達障害はもちろんですが、そのほかの障害種においても、通級指導の拡充、充実はまさに待ったなしの課題となっていると言わなければなりません。
 私は、先日、山口県のことばを育てる親の会の方からお話を伺いました。
 他校通級が当たり前になっている状況の中で、親御さんが車で一時間から一時間半かけて通級指導教室のある学校まで送っている、そして一時間の指導を受けて、また一時間半かけて帰るとおっしゃっておられました。中には、通級指導教室のあるその近くにわざわざアパートを借りて通っている子供もいる、そういうお話でした。それでも、子供たちは本当に通級指導教室を楽しみにしていて、元気の源、心のオアシスだと言われておりました。だからこそ、大変な中でもどうしても通わせてやりたいというのが親御さんたちの切なる思いなわけです。
 しかし、こうしたことができるのはごく一部の家庭だけであり、ニーズのある全ての子供たちが通えるように抜本的に教室の数をふやしてほしい、そういうふうに切実に訴えられました。この思いを政府は正面から受けとめていただきたいというふうに思います。
 きょうのこれまでの質疑でも明らかなように、財政審の建議で挙げられた指摘、通級指導とはクラスサイズの話でも、また学力の話でもないこと、教員一人当たりの児童生徒数も間違っていること、地方が求めているのは通級指導教室の新増設であり、発達障害以外の通級指導の拡充も求められていることなど、まさにどれをとっても、的外れも甚だしいと言わなければなりません。
 財政審建議、財務省の主張の方が、副大臣、エビデンスどころか議論の前提さえも欠いているのではないでしょうか。お答えいただきたいと思います。
○大塚副大臣 先ほど来、間違っているとかなんとかいろいろよくおっしゃいますけれども、間違っていないということをお示しした事例も含めて、最後にまた間違っているとおっしゃったのはいかがなものかなと思っておりますけれども。
 あるいは、先ほどの教員一人当たり児童数も、山梨県も、これはちゃんとしたデータに基づいて計算しておりますが、個別事情でそうでないように手当てはされているということはあるにしても、データとして間違っているわけではないということと、山梨県を仮に除いたとしても最大で十倍、差があるという、これもまた事実でございますので、それも含めて御指摘を申し上げておきたいと思いますが、通級指導の意義を私どもも否定しているわけではございませんで、そういう御要望が多いということもよく認識をしております。
 一方で、文科省の実態調査でも、五十の自治体が、発達障害の児童生徒がいるが通級指導教室の設置は必要ないというふうに回答している自治体もあるわけでございまして、こうしたところでどういう取り組みがなされているかということは、これは今後参考にできる事例が含まれている可能性も多分にございます。こういうところもしっかり丁寧に分析をし、横展開、全国展開できるような知恵がそこに隠れているのであれば、そういったものを引っ張り出していく必要があるのではないかということを申し上げているだけでございますので、通級指導が必要ないということを財務省が提案しているという間違った印象を与えるような質問をされない方がありがたいなというふうに思っているわけでございます。
○大平委員 山梨県の特別の措置というお話もありましたが、それが実態だと、私は実態に基づいて議論をしている、質疑をしているというふうに言いたいと思います。
 最後に、松野文科大臣にお伺いしたいと思います。
 こうした財政審の建議には、当然、松野大臣もくみしていないというふうに思います。通級指導の基礎定数化初め、教職員定数の改善を必ず実現していくということを私は強く求めたいと思いますが、最後に大臣の御決意をお聞きしたいと思います。
○松野国務大臣 今までの御議論にもありましたけれども、発達障害などにより、通常の学級に在籍しながら障害の状態に応じた特別指導を受ける児童生徒は、十年間で二・三倍に増加をしております。日本語能力に応じた指導が必要な児童生徒は、十年間で一・六倍に増加するなど、学校を取り巻く課題が複雑困難化をしており、きめ細やかに対応していくことが重要だと考えております。
 さらに、このような個に応じた必要な指導が受けられていない児童生徒が相当数いる実態を踏まえれば、一刻も早く対応することが必要だと考えております。
 このため、文部科学省としては、平成二十九年度概算要求において、「次世代の学校」指導体制実現構想を策定し、発達障害児等の児童生徒への通級による指導や外国人児童生徒等への日本語指導にかかわる教員の基礎定数化などの定数改善を要求しており、このことにより安定的、計画的な採用が行われるとともに、子供たちにきめ細やかな指導が行われるよう取り組んでまいります。
○大平委員 財政審建議にくみすることなく、国民の多くが求めている教職員定数の改善を強く求めて、きょうの質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。