国会質問

2017年05月02日

給付型奨学金の返還強制は趣旨に反する(3月17日文部科学委員会)

衆議院会議録情報 第193回国会 文部科学委員会 第6号

○大平委員 日本共産党の大平喜信です。
 午前中に引き続きまして、政府に質疑させていただきたいと思います。
 私は、本会議でも大臣に質問をさせていただきましたが、給付型奨学金の返還の問題についてきょうは伺いたいと思います。
 法案では、第十七条の三で、「機構は、学資支給金の支給を受けた者が次の各号のいずれかに該当するに至ったときは、文部科学省令で定めるところにより、その者から、その支給を受けた学資支給金の額に相当する金額の全部又は一部を返還させることができる。」としております。そして、その該当事項として、「一 学業成績が著しく不良となったと認められるとき。」「二 学生等たるにふさわしくない行為があったと認められるとき。」と定めております。
 まず、大臣に伺います。
 なぜ、学業成績の不良が返還要件に入っているんでしょうか。
○松野国務大臣 お答えをいたします。
 給付型奨学金制度については、意欲と能力がありながら、経済的理由により進学を断念せざるを得ない者の進学を後押しすることを目的としております。
 この制度は、学生等の努力を促す観点が重要であるとともに、貸与型奨学金以上に説明責任が問われるものであることから、学業に励まず学業成績が著しく不良となった者については返還を求めることができることとしているところであります。
○大平委員 先ほども御紹介ありましたが、きょう午前中の参考人質疑で、久波参考人の方から、努力するエンジンを持ち合わせていない、こういうお話がありました。先ほど大臣の答弁にもありましたが、学業に励みたくても励めない実態があるということを、ぜひとも私はきょう大臣に知っていただきたいというふうに思います。
 ここに、私、調査室の資料の二〇一四年八月二十九日に発表された学生への経済的支援の在り方に関する検討会報告書を持っております。「第一章 学生等の置かれた経済的状況」の四番、「学生等の経済的状況から見る課題」には次のように書いております。「今日の学生等は、高等教育段階への進学時から在学中、卒業後を通じて、厳しい経済的状況に置かれる者も少なくない。特に、生活保護世帯やひとり親家庭世帯、児童養護施設入所者や退所者等、家計の特に厳しい者については、中退率が高く、また大学等への進学率も一般に比べ低い等の傾向がある。」このように定められております。
 まさに今度の給付型奨学金の支給対象となる、そういう方たちが、奨学金の支給を受けてもなお経済的困難が多く、家庭環境のさまざまな問題なども含めて、中途退学をせざるを得ない、あるいは大学への進学率も低い傾向にある、こういうことを示しております。
 文科省に改めてお伺いしたいんですが、こうした方たちの中退率の高さ、あるいは進学率の低さについて示す最新のデータがあれば御紹介いただきたいと思います。
○常盤政府参考人 お答えを申し上げます。
 大学等への進学率につきましては、全世帯の現役進学率が七三・二%であるのに対しまして、生活保護世帯の進学率は三一・七%、児童養護施設の退所者等の進学率は二二・六%となっております。
 また、中退率でございますが、文部科学省が行った調査では、平成二十四年度単年度、これは特定のカテゴリーということではなくて全学生でございますけれども、全学生数に占める中途退学者の割合は全世帯で二・六五%となっております。
 なお、民間による同じ年度の調査でございます。この調査では、児童養護施設の退所者について、大学等への進学後に、これは単年度でございませんで四年間でございますけれども、四年間で約三割が中途退学しているとの調査もあるというふうに承知をしております。
○大平委員 進学率でいえば、全体が七割台なのに対して、生活保護世帯あるいは児童養護施設退所者等は二割から三割、こういう進学率であること、また中退率は、民間の調査で約三割が中退している、こういう数字もあるとのことでした。なぜ、中退をせざるを得ない、こういう方たちが多いのか。
 先ほど来からありますとおり、言うまでもなく、低所得世帯の学生さんほど、奨学金だけでは当然学費や生活費を賄うには足らない、アルバイトを二つ三つとかけ持ちしている場合が少なくありません。
 ことしの二月に発表された大学生協連が毎年行っております学生生活実態調査では、学生のバイト就労率は、データがある二〇〇八年以降最も多く、七一・九%に上る、週二十時間以上働いている学生が一三・九%、また、夜十時から朝の五時まで、深夜時間帯にバイトをしている学生が二〇・七%、こういう調査結果が出ております。
 中には、きょう午前中、花井参考人の方からもありましたが、いわゆるブラックバイト、こういうふうに言われる、学生であることを考慮されず、無理なシフトが組まれたり重い責任が課せられたりする学生も少なくありません。
 そうしたもとで、アルバイトのために大学の授業に出られない、試験を受けられない、こういう深刻な事態さえ起きている。結果として、単位が足らず留年をしたり、また体や心を壊したり、あるいは、それでもなお経済的な困難によって中退せざるを得ない学生が生まれてしまっているのであります。
 大臣にお尋ねいたします。
 学生たち、とりわけ低所得層のこうした学生たちがアルバイトに追われるような、こうした厳しい状況にあることをどのようにお感じですか。大臣もこうした実態をお認めになるかどうか、お答えください。
○松野国務大臣 お答えをいたします。
 アルバイトにより学業に支障が出るようなことは、望ましいことではないと考えております。文部科学省としては、引き続き、奨学金制度や授業料減免の充実を図ることで、学生が安心して学ぶことができる環境の整備に取り組んでまいりたいと考えております。
○大平委員 私が伺ったのは、こうした厳しい状況に、今の貸与の奨学金を受けてもなおアルバイトを二つ三つとかけ持ちせざるを得ない、その中でまたブラックバイトという違法、無法さえ疑われるようなこうした深刻な実態がある、そうした中で単位を落とすとか、その結果留年せざるを得ない、こういう学生が生まれている、こういう実態があるということをお認めになりますか。もう一度お答えください。
○松野国務大臣 日本学生支援機構の奨学金は、学生生活費の実態を踏まえて貸与額を設定し、学生の希望に応じて貸与を行っております。貸与制奨学金制度に関してはそういった制度になっておりますが、先ほど申し上げましたとおり、アルバイトにより学業に支障が出るというようなことは、これは望ましいことではないというのは当然のことでございますので、引き続き、学生が安心して学ぶことができる環境整備に取り組んでまいりたいということでございます。
○大平委員 なかなか現状をお認めになっていただけないわけですが、また、午前中の参考人質疑の議事録もぜひとも大臣に読んでいただきたいというふうに思います。
 その上で、法文上の問題を具体的に伺っていきたいと思いますが、文科省に伺います。学業成績が著しく不良となったというのは、どういう状況のことを指しているんでしょうか。
○常盤政府参考人 お答え申し上げます。
 成績が著しく不良という場合といたしましては、例えば、標準的な修業期間での卒業が困難となることが確定した場合や、当該年度における修得単位が著しく少ない場合、こうしたことを想定しております。
○大平委員 卒業延期が確定をすれば返還が求められる、こういうことになるんでしょうか。
○常盤政府参考人 お答え申し上げます。
 給付型奨学金制度の制度の運用に当たりましては、貸与型の奨学金で行っております適格認定制度というものがございます、この制度を活用いたしまして、毎年度、学業の状況等を確認して、支給の継続等について判定する仕組みとすることを予定しております。
 現在の貸与型奨学金の適格認定におきましては、学業状況や経済状況などを確認いたしまして、奨学金を受給する奨学生としてふさわしい適格性を有する学生であるかどうかを認定いたしております。その状況によりまして、継続、警告、停止、廃止のいずれかの処置となるわけでございます。
 お尋ねの卒業延期が確定した場合につきましては、現在の貸与型の奨学金の適格認定におきましては停止または廃止という処置になります。給付型奨学金の受給者の卒業延期が確定した場合につきましては、貸与より厳格な取り扱いとすることが原則と考えておりまして、返還を求める場合がございます。その一方で、そうした状況に至った事情はさまざまであると考えられますので、返還を求めるかどうかの判断に当たりましては、当該事情も十分に勘案した上で、必要に応じて返還を求めるような運用が行われることが重要であると考えております。
○大平委員 卒業延期がそのままイコール返還になるということではないということが、今の局長の答弁だったというふうに思います。確認したいと思います。
 さらに伺います。
 給付型奨学金の支給を受けている学生が中途退学をした場合は、返還を求めることになるんでしょうか。いかがでしょうか。
○常盤政府参考人 お答えいたします。
 意欲と能力のある学生等が経済的理由により修学を断念し、中途退学に陥ることのないよう、必要な経済的支援を行うということは重要なことであると考えております。
 このため、経済的に困難を抱える学生等が安心して学ぶことができるように、このたびの給付型奨学金制度の創設、あるいは無利子奨学金の充実、さらには所得連動返還型制度を新しく改善するということ、そして授業料減免の拡充、こうしたさまざまな経済的支援の充実を図ってきているところでございます。
 給付型奨学金の受給者が、正当な理由なく、著しい学業不振に陥り中退に至った場合は、返還を求めることが適当と考えております。ただ一方で、中退の理由といたしましては、経済的理由のほか、転学であるとか、あるいは就職であるとか、さまざまな事情があるというケースもあると考えられますので、一律に取り扱いを定めることは困難であると考えております。
 給付型奨学金の受給者が中退した場合に返還を求めるかどうかの判断に当たりましては、そうした状況に至った事情も十分に勘案した上で、必要に応じて返還を求めるような運用が行われることが重要であると考えております。
○大平委員 きょう午前中の参考人質疑でも、小林参考人の方から、この制度にまさにかかわってこられた方ですけれども、この問題を伺いましたら、同じように、機械的に一律には判断するべきではない、こういう御回答があったというふうに思います。
 大臣、先ほど太田委員の質問にもありましたけれども、それで間違いないでしょうか。確認です。一律に機械的に判断をしないということで間違いありませんか。
○松野国務大臣 先ほど政府参考人の方からもあったとおりでございますが、一律、機械的に判断ということではございません。
○大平委員 改めて、この返還制度は、低所得世帯の学生ほどその利用を控えさせかねず、また、低所得者世帯ほど学業に励みたくても励めない困難な実態が多くある、そうしたもとで、学業不振を理由に返還を求めるようなこうしたやり方は、給付の停止、廃止にとどまらず、これまで給付したものを返せというのは余りにも冷たい、そもそもの趣旨とも矛盾するというふうに私は思います。私たちはこうしたやり方は反対だということを申し上げて、最後にもう一点、質問したいと思います。
 政府案では、国公立大学に通う自宅生は月額二万円、自宅外生は月額三万円支給するとしながら、国立大学で授業料免除を受けた学生は、自宅生はゼロ、自宅外生は二万円に減額されるとしています。
 政府、文科省は、理由を聞きますと、授業料減免制度も給付的措置であることと、国立大学の授業料減免は全額国費である、こんな説明を受けたわけですけれども、どこからお金が出ているかというのは政治の側の都合であり、学生たち自身にとっては、その生活実態が給付の必要性を訴えており、どこから出ているかというのは私は関係ないというふうに思うんです。
 先ほども述べたとおり、低所得世帯は、親からの仕送りも期待できず、生活費を何らかの方法で賄わなければ学生生活を送ることはできない。奨学金はその補填のために必要なのであり、たとえ授業料が免除されたとしても必要なのであります。
 さらに、国立大学の授業料減免は全額国費で出している、こういう理由でありますが、私は、それを言うなら、むしろ、もっと公立大学やあるいは私立大学にも国費を投入して、授業料減免の枠を拡大していくことこそ求められているというふうに感じます。
 大臣にお伺いしたいと思います。
 こうした授業料免除を受けた国立大生の減額措置、私はやめるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○松野国務大臣 高等教育における教育費負担の軽減については、従来から、奨学金制度のほか、授業料免除などの各種支援方策を組み合わせながら総合的に施策を講じてきたところであります。
 国立大学においては、国費によって授業料減免制度が整備をされており、授業料免除の対象となる学生に対しては既に給付的支援が行われております。このことから、私立大学に通う方との公平性の観点も踏まえ、国立大学において授業料免除を受けた学生については給付型奨学金の支給額を調整することを検討しています。
 その上で、給付型奨学金の対象者が国立大学に進学した場合には、授業料の全額免除を行う取り扱いとし、そのことが就学前の段階であらかじめ予見できるようにすることで進学の後押しを図ってまいりたいと考えております。
○大平委員 結局、議論もありましたけれども、やはり全体の給与型奨学金の規模が少な過ぎる、狭過ぎる。規模が小さ過ぎるがために、私は、こうした困っている人同士がとり合わなければならないような状況になってしまっている、そういうさまざまな問題点が生まれてしまっているというふうに思わずにはおられません。
 規模もまた内容も大きく拡充をして、まさに文字どおりの本物の給付奨学金を創設すること、また世界から見ても高過ぎる学費を引き下げることとセットにして、この教育費の無償化に向けて引き続き取り組むことが必要だと訴えまして、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。