学テが教育をゆがめている―文科省は実態把握を(4月14日文部科学委員会)
衆議院会議録情報 第193回国会 文部科学委員会 第10号
○大平委員 日本共産党の大平喜信です。
ことしで十一年目となる全国学力テストが来週の十八日にことしも行われます。ことしもまた全国全ての学校の全ての小学六年生と全ての中学三年生がこのテストを受けることになります。
これまでも私たちは、この全国学力テストの実施とその結果の公表が教育をゆがめるさまざまな弊害を現に生んできていることを指摘し、実施はやめるように求めてまいりました。きょうは、この問題について松野文科大臣に質問したいと思います。
まず、結果の公表にかかわってお伺いしたいと思います。
文科省は、平均正答率などの調査結果を都道府県別に公表しており、さらに、各教育委員会の判断で、自治体ごとあるいは学校ごとにも公表できるようにしてきました。そのことが、全国で序列化と過度な競争を招いている、さまざまな形で教育をゆがめております。
そのことは、文科省自身も実施要領の中で、調査結果の公表に関しては、「調査により測定できるのは学力の特定の一部分であること、学校における教育活動の一側面であることなどを踏まえるとともに、序列化や過度な競争が生じないようにするなど教育上の効果や影響等に十分配慮することが重要である。」と述べているとおりであります。
さらに、昨年の八月十二日、初等中等教育局長名での「全国学力・学習状況調査の結果の分析及び公表について」との通知が発出をされました。
まず、局長に伺いたいと思います。
この通知の趣旨について、簡潔にお示しいただけますか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
委員お尋ねのこの通知の趣旨でございますが、全国学力・学習状況調査の趣旨、目的に沿った実施を徹底し、数値データによる単純な比較が行われ、それを上昇させることが主たる関心事とならないように、各教育委員会に対しまして、報道発表も含め、調査結果の公表に際しては、序列化や過度な競争が生じないようにするなど、教育上の効果や影響等を考慮して適切なものとなるよう、改めて御配慮いただくというものでございます。
○大平委員 今の答弁にありましたとおり、文部科学省も、全国学力テストの結果の公表によって、数値データの上昇のみを目的にしているととられかねないような行き過ぎた取り扱いが起こりかねないという弊害を認めておられ、あくまでも序列化や過度な競争が生じないよう配慮せよと、こうした通知で再度念押しをしております。
そして、昨年度からは、実際の公表に当たっては、都道府県別の平均正答率を小数点以下まで示していたものから整数値までにとどめて公表するというものに変更をしました。
局長、これはなぜこういうふうに変更したんでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、平成二十八年度の全国学力・学習状況調査の結果につきましては、国といたしましては、平均正答率についての都道府県の一覧では小数点以下の四捨五入をした整数値で公表をしております。
この理由につきましては、平均正答率につきましては、学力面において細かい桁における微少な差異は実質的な違いを示すものではないからでございまして、より序列化や過度な競争を招くおそれがないように、都道府県の一覧では、公表は整数値に変更したということでございます。
○大平委員 あえて局長は読み飛ばしたのかなと思われるんですが、その前には、「小数点以下第一位の数値を公表することが、数値データによる単純な比較が行われ、序列化や過度な競争を助長する一つの要因として考えられる。」というふうにここで述べておられます。だから、整数値までの公表にしたと。
私は最初から公表そのものをやめるべきだというふうに思いますが、少なくとも、この間、文科省としても、そういう弊害が生まれるということを認めざるを得なくなっている。
私、この間、全国各地でのこの結果の公表によるさまざまな弊害をお伺いしてまいりました。
例えば、青森の先生から聞いたお話では、青森県というのは毎回成績の上位にランクインをしている県でありますが、例えば校長会で、席順が学力テストの成績順になっていたりとか、あるいは学校ごとの順位が書かれた資料が渡されるということが平気で行われている、こんなお話も伺いました。
また、これは報道でも大きく出ましたので御存じだと思いますが、静岡県、二〇一三年の学力テストで小学六年生の国語が全国最下位だったことを受けて、静岡の県知事が、テスト結果が最下位ということは授業が最下位ということだ、教員に責任がある、責任の所在を明らかにするために下位百校を公表すると公言しました。多くの県民が反対の声を上げて、それ自身は行われませんでしたが、そのかわりにといいますか、全国平均を上回った八十六校の校長名を公表した。すぐに地元マスコミはこれを学校名もつけて公表し、結果として、全国平均を下回った残りの学校が世に明らかになるという、こういうことになってしまったわけです。
大臣、この間、結果の公表によって序列化や過度な競争が生まれてはならないという通知も出してきましたが、現状はこうなっている状況についてどんなふうに受けとめておられるでしょうか。
○松野国務大臣 お答えをいたします。
全国学力・学習状況調査を実施することにより序列化や過度な競争を招いているものではないと現状を認識していますが、今後、序列化や過度な競争を招くおそれがないように、先般、公表方法の変更などを行ったところであります。
また、文部科学省としては、各教育委員会に対し、教育指導の改善充実に活用できるような多角的な観点から分析した内容の公表をお願いするとともに、国としても、調査結果の公表においては多角的な観点からの分析を行ってまいります。
○大平委員 過度な競争は招いていないという御答弁でした。少し驚きました。一方で、通知で繰り返し文科省自身が、招いてはならないというこのアナウンスをやっているわけですよね。
そこで伺います。
各都道府県教育委員会が作成している教育振興基本計画というのがありますが、教育施策の目標値に全国学力テストの平均正答率などを置いているところが少なくないというふうに私も聞いております。
例えば、私の地元、局長、ちょっと紹介していただきたいんですが、広島県あるいはお隣の山口県のこの計画の内容がどのようになっているか、お示しいただけますか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
平成二十九年に策定されました広島県教育委員会主要施策実施方針におきましては、全国学力・学習状況調査の平均正答率におけるトップ県とのポイント差及び同調査の全国平均を上回っている教科数が指標になっているところでございます。
また、平成二十五年に策定されております山口県教育振興基本計画におきましては、全国学力・学習状況調査の平均正答率が小中学校の全区分で全国平均を上回ること、及び、勉強が好き、どちらかといえば好きと回答している児童生徒の割合を増加させることなどが目標となっているところでございます。
○大平委員 今御答弁のありましたとおり、今や、少なくない都道府県が学力テストの平均正答率を教育施策の目標として使っているという現状があるわけです。
さらに私、御紹介をしたいのは、岡山県の状況であります。岡山県では、県の行動計画の冒頭に、重点政策一というふうにした上で、教育県岡山の復活を掲げております。その冒頭で、この全国学力テストの平均正答率を全国十位以内を目指すということが高らかにうたわれております。
これはまさに、文科省自身も繰り返し指摘をしている、数値データの上昇が主たる関心事になってしまっているんじゃないかと感じずにはおられないんですね。実施要領でも言われています、調査により測定できるのは学力の特定の一部分であることということが、果たして本当に徹底されているのか。
何より、他県と比較をして順位いかんをはかるということに何の意味があるのかというふうに思うわけです。きちんと学力が身についているかどうかをはかる指標としても私は誤っているんじゃないかと思うわけです。たとえ十位以内に入っても、その年、全国の学力テストの成績が全国で悪かったら、やはり本来子供たちにつけてほしい力が、十位以内に入ったとしてもついていないということにこの話からいえばなるわけで、それが県の重点政策の冒頭に大きく掲げられているということに私は非常に違和感を感じるわけです。
大臣、こうした岡山県の実態を含め、こうした事態、状況をどのようにお感じになられるでしょうか。文科省自身が危惧してきた序列化、過度な競争というのが現場でも起きているんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
文部科学省といたしましては、先ほど御説明申し上げましたとおり、通知等におきまして、過度な競争を招くことのないようにということで各都道府県の教育委員会に対してお願いをしているところでございます。
また、全国学力・学習状況調査の結果公表について、文部科学省といたしまして、現状においては過度な競争を招いている実態にあるという認識はございませんで、今年度以降も引き続き調査結果の公表を行っていきたいと考えております。
○大平委員 招いていない、しかし通知は出している。と言うから、私は、こうした実態、リアルな実態を聞き取ったものを皆さんに御紹介しているわけです。
何が深刻かといえば、こうした目標を掲げることが、何よりも子供たち、そして学校の現場、教員の皆さんに厳しい点数競争に追い立てているということなんです。
岡山県では、学力テストで全国十位以内を目指すということで、冒頭にも述べましたが、自治体ごとに結果を公表し、そして、昨年度までの三年間、頑張る学校、校区には百万円を交付する、こういう施策も行われる。小学校六年生、中学校三年生の全国学力テスト以外に、県独自の中一テスト、小学校四年生、小学校五年生と中学校二年生でのたしかめテストの実施など、子供たちと教員を巻き込んだ激しい競争が広がっている。子供や保護者の皆さんからも、宿題が多くて大変だ、夜遅くまで学校に電気がついている、こういう不安の声、危惧の声が多く寄せられております。
このように、結果の公表によって各学校の点数が比較をされる、テストの平均点を上げることが至上命題となり、子供たちと教員が過度な競争に駆り立てられ、教育をゆがめる弊害が私は深刻なものになっていると思います。
大臣、改めて、文科省もこの弊害を認めている調査結果の公表を私はやめるべきだと思いますが、いかがですか。
○松野国務大臣 お答えをいたします。
全国学力・学習状況調査の結果公表が過度な競争を招いているとの認識はなく、引き続き調査結果の公表は行っていきたいと考えております。
なお、国として都道府県別の結果を公表している理由としては、国全体の調査結果について説明責任を有しており、その視点から、全国的な調査結果だけを示すのでは十分でなく、都道府県単位の状況について公表する必要があるためであること、また、都道府県教育委員会は、小中学校の県費負担教職員の人事権を有するなど都道府県域全体の教育行政に対してさまざまな役割を担っていることなどが挙げられております。
○大平委員 学力テストの実施と、その結果の公表によって生まれる弊害はこれだけにとどまりません。
昨年の四月の二十八日に、同じく文科省初等中等教育局長名で発出した「全国学力・学習状況調査に係る適切な取組の推進について」、これは異例の通知ですが、こうしたものが発出されました。
局長に伺います。
なぜこうした通知が発出されたのか、その背景と趣旨について簡潔にお示しください。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
全国学力・学習状況調査は、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握し、分析を行い、教育施策及び教育指導の成果と課題の検証や、その改善に役立てることを目的として実施されております。
委員御指摘の通知でございますが、仮に、数値データの上昇のみを目的としているととられかねないような行き過ぎた取り扱いがあれば、それはこの調査の趣旨、目的を損なうものであると考えられることから、関係者間におきまして、いま一度原点に立ち戻って、この調査の趣旨、目的に沿った実施がなされるよう、各教育委員会及び所管の学校に対して依頼する目的で発出したものでございます。
○大平委員 また、局長、意図的なんでしょうか。一番大事なところを読み飛ばしているんですね。
この通知では、「一方で、四月前後になると、例えば、調査実施前に授業時間を使って集中的に過去の調査問題を練習させ、本来実施すべき学習が十分に実施できないなどといった声が一部から寄せられるといった状況が生じています。」だから、こういう、数値データの上昇を目的ととられかねないような行き過ぎた取り組みになってはならないということを言っているんですね。
ここで述べている、本来実施すべき学習が十分に実施できない状況というのは、どういう状況のことを指しているんでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
数値データの上昇のみを目的として、調査実施前に授業時間を使ってテスト形式で集中的に過去の調査問題を練習させることによって、結果として、本来行うべき授業の展開とか児童生徒の理解定着の機会を狭めるような状況が、お尋ねの状況で想定されているところでございます。
○大平委員 テスト対策と称して過去問を繰り返しやらせる。四月に行われる全国学力テストの直前になれば、そういうことが全国で大きく行われる。そういうことがあるから、そういうことにならないようにということで、この四月二十八日、異例の通知が出されたわけです。
私、以前の質疑の際にも紹介したんですが、例えば、私の地元の広島の地方紙、中国新聞では、次のような記事を目にしました。新学期が始まっても、テスト対象となる小学六年生は、四月下旬のテスト実施日まで前年度の復習をするのが年中行事になった、配られた真新しい教科書が学力テストの翌日まで一切使われず、机の中で眠ったままに、六年生の新学期はそんな光景が普通になった、こんな記事を見ました。
まさに学力テストによって、今、全国各地で、この通知が述べている、本来実施すべき学習が十分に実施できない、そういう看過できない事態が私、生まれていると思うんです。
さらに、私は島根県の状況を御紹介したいと思います。
島根県では、この間、我が党の県議団が繰り返しこの全国学力テストについて県議会で取り上げてきました。その中で、テスト直前に過去問題を解かせている学校がどのぐらいあるのか、これを調査せよと要求し続けてきました。そして、その調査結果を、ことし二月の県議会定例議会で県の教育長が報告をしました。そこで明らかになったことは、島根県内二百九十九の公立小中学校のうち、小学校で九十三校、中学校で十八校の合わせて百十一校、割合にしておよそ四割の学校で直前の対策を行っていたことが明らかになりました。
委員の皆さんに配付している資料をごらんいただきたいと思います。県の教育委員会の作成の資料ですけれども、そのうち四十九の小学校と八の中学校では、まさに学力テストが行われる月である四月に、授業時間を使って行わせております。この表全体にある二月から四月までの三カ月の間で、これも直前だと言っていいと思いますが、二月から四月の三カ月の間で見ると、小中学校合わせて七十八校、二百九十九校のうち七十八校で、本来の授業時間を使って、授業時間を削って過去問を行わせているということが明らかになりました。
まさに、学力テストによって、そして結果の公表も含めたこうした点数競争の中で、本来実施すべき学習が十分に実施できない状況が、この通知では一部と書いているんですけれども、私は、決して一部どころか、相当の規模で生じていると思います。
松野大臣に改めてお伺いしたいと思いますが、何のための学力テストなのかという根本が問われる事態が私は横行していると思います。皆さん方が進める施策がこうした教育のゆがみを引き起こしているという御認識があるでしょうか。松野大臣にお伺いします。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
まず、委員御紹介の島根県の事例でございますが、島根県につきましては、例えば、四月に、授業時間で類似問題も含めた過去問題を使ったかどうか、そういった使ったか否かということだけを把握したものではないという、そういう調査でございます。
すなわち、数値データの上昇のみを目的としているのか、あるいは本来実施すべき学習が十分に実施できていないのか、これらの要素も含めて把握しているものではございませんので、島根県教育委員会におきましても、例えば、四月に行った五十七校全てが問題事例であるというような認識はしておりませんで、私どもとしても、同じような認識を持っている次第でございます。
また、委員お尋ねの件につきまして、私どもとしては既に繰り返し通知を出しているわけでございまして、学校において数値データの上昇のみを目的としているととられかねないような行き過ぎた取り扱いがなされることは好ましくないということを各都道府県教育委員会等に対してお示ししておりますが、現状において、そのような取り扱いがなされているというような認識は持っていないということでございます。
○大平委員 私は、大臣の御認識をお伺いしたわけですけれども。
島根県だけでは決してないです。中国新聞の記事を先ほど紹介したこともありますし、例えば、前半紹介しました岡山の先生たちから私が聞いた話の中でも、本来行うべき授業内容を圧迫しているとか、時間をとられ教科指導に影響が出ている、過去問の解説に時間がかかり授業が進まない、授業時間が減って計画どおりに進まない、こうした声をたくさん聞いております。文科省はそういう声を聞いていないのかと疑問にも思うわけです。
島根県の調査のことを、局長、云々言われましたけれども、大臣にお伺いしたいと思うんですが、文部科学省の最低限の責任として、全国各地で本来実施すべき学習が十分に実施できていない状況が、文科省としては一部に生じていると。しかし、一部であったとしても、こういう看過できない状況が生まれているということをお認めになっているわけですから、そして、少なくとも島根ではそのことをにおわせる資料を教育委員会が調査をして公表している。
文部科学省としての最低限の責任として、今、全国でこうした問題が起きているのか実態の把握を行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○松野国務大臣 この通知の趣旨は、関係者間において、いま一度原点に立ち戻って、本調査の趣旨、目的に沿った実施がなされることを求めるものであり、何らかの実態把握を求めるものではありません。
なお、文部科学省としては、これまでも、実際に学校を訪問し、児童生徒や学級担任、教科担任等と意見交換をしてきており、今後とも、必要に応じ適宜、状況の把握に努めてまいりたいと考えております。
○大平委員 いま一度原点に立ち戻ってということを強調しているということは、原点から踏み外しているような状況が、現状、全国にあるという認識の裏返しではないでしょうか。
通知一枚出して終わりという対応ではなくて、実施すべき学習が実施できていないという実態が少なくともあるわけですから、これは全国でどうなっているのかと、全国学力調査を十一年目も引き続きやる、さらに結果の公表もやると言っているわけですから、私は、その中で生まれている弊害をきちんと実態調査するということは最低限の責任だ、そのことも重ねて訴えておきたいというふうに思います。
今でさえ、結果の公表と点数競争の中でこれだけの弊害が出ているにもかかわらず、今年度から文部科学省は、さらにその公表の内容を質的にも規模的にも広げようとしております。
本年三月二十九日、全国的な学力調査に関する専門家会議が、「全国的な学力調査の今後の改善方策について」のまとめを発表いたしました。その中で、全国都道府県別の調査結果の公表に加えて、今年度から全国の指定都市ごとにも公表することを決めました。公表する範囲がどんどん広がっている。
それだけではありません。このまとめでは、これまで各都道府県の教科ごとに全体一本での平均正答率を公表していたところから、より細かな、新たな仕組みでの公表にするとしていますが、どういう内容になっているのか、御説明ください。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
まず最初に、今年度から新たに指定都市についても公表するという点でございますが、これは、従来、指定都市は教職員の人事権を持っていたわけですが、給与の負担についての権限を持っていなかったということで、今回、指定都市の役割が高まったということで、都道府県並みということで、新たな対象として公表の対象とするというふうにしたところでございます。
また、お尋ねの、委員御指摘の改善方策のまとめの関係でございますが、ここにおきましては、二教科四区分、理科を実施する場合には三教科五区分でございますが、それらごとに、児童生徒を正答数の大きい順に整列し、人数割合によって二五%刻みで四つの階層分けを行い、A、B、C、Dの四つの層として示した割合、それから、全国学力・学習状況調査結果チャートの学校運営における学校質問紙調査項目に係る領域ごとの数値、それから、同じく全国学力・学習状況調査結果チャートの児童生徒における児童生徒質問紙調査項目に係る領域ごとの数値、さらには、年度ごとの調査内容、結果を踏まえた特徴的な質問紙調査項目の回答状況につきまして、新たに都道府県、指定都市の一覧での提供、公表を行うこととするというふうにされております。
○大平委員 つまり、あなたの県にはよくできたAに属する子供たちが何人いて、ほとんどできなかったDに属する子供たちが何人いますと、人数割合で示す、これを全国一覧にして公表しようというのであります。序列化や過度な競争を生じないようにといいながら、まさに序列化を招くような材料を文科省みずからわざわざ提供し、公表しようとしているのであります。
局長に重ねて伺いますが、全体一本での平均正答率の公表を今、都道府県ごとに行っているわけですが、各教育委員会の判断で、この新たな仕組みも、自治体ごと、学校ごとに公表することを認めるというものになるんでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
調査結果の公表に関しましては、教育委員会や学校が保護者や地域住民に対して説明責任を果たすことが重要である一方、調査により測定できるのは学力の特定の一部分であること、学校における教育活動の一側面であることなどを踏まえるとともに、序列化や過度な競争が生じないようにするなど教育上の効果や影響等に十分配慮することが重要であるということでございます。
その上で、調査結果の公表に当たりましては、公表する内容や方法等については、教育上の効果や影響等を考慮して適切なものとなるよう判断すること、単に数値のみの公表は行わず、調査結果について分析を行い、その分析結果をあわせて公表すること、さらに、数値について一覧での公表やそれらの数値により順位を付した公表などは行わないことなどを踏まえた上で、学校の設置管理者である各教育委員会の判断で、それぞれの教育委員会、さらには学校ごとの結果を公表することは可能であるというふうに考えております。
○大平委員 とんでもないと言わなければなりません。
文科省は繰り返し、序列化や過度な競争は生じないようにと言いながら、まさにAからDの四つのランクづけをして、これも新たに都道府県ごとに公表して、そして自治体ごと、学校ごとの公表も可能とするというものです。全く矛盾していると言わなければならないと私は思うんですね。
それだけじゃありません。このまとめでは、新たな指標を教育委員会に提供するとして、「各教育委員会に対し、学校ごとに、学校がより一層指導を充実すべきと考えられる一定の学力層の児童生徒の人数及びその割合を示す。」と書いており、さらに、このことにより、教職員の配置や学校への予算配分等への活用をしやすくするということまで、このまとめでは書かれております。
これは局長、どういう意味なのか、新たなこの指標についての説明をしていただけますか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の、学校がより一層指導を充実すべきと考えられる一定の学力層の児童生徒の人数及びその割合についてでございますが、国語、算数、数学の教科ごとに、比較的課題を克服しやすいと推測される設問として、全国正答率五〇%以上の設問を取り出し、そのような設問のうち、正答の設問数が二分の一以下である児童生徒について、学校ごとに人数及びその割合を割り出すという趣旨でございます。
○大平委員 最後に、大臣にお伺いします。
先ほど答弁でも大臣おっしゃいました、説明責任だ、分析しやすいようにわかりやすく示すとおっしゃられるわけですが、このことによってどれだけ学校現場が、子供たちや教員の皆さんが競争に追い立てられ、追い詰められているか。皆さんの通知の中でも、実施から丸十年がたって、いま一度原点に立ち戻ってという言葉もありましたが、これだけ皆さんもお認めになる弊害が生まれている全国学力テストは中止すべきではありませんでしょうか。少なくとも、調査結果の公表は直ちにやめるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○松野国務大臣 文部科学省において、現状が学力テストによって過度な競争を招いているという認識はございません。この学力テストによって一定の教育効果が出、また、各教育委員会がその結果を精査、分析することによって、それぞれがより効率的な教育行政を行うことに資するものと考えております。
○大平委員 毎年六十億円の予算は、何よりも、少人数学級など教育条件の整備に充てるべきだということを訴えて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。