国会質問

2017年06月12日

既存の教育機関への支援の充実こそ必要(4月28日文部科学委員会)

衆議院会議録情報 第193回国会 文部科学委員会 第13号

○大平委員 日本共産党の大平喜信です。
 政府は、本法案で、専門職大学の制度化が必要な理由として、第四次産業革命の進展と国際競争の激化に伴い産業構造が急速に転換する中、すぐれた専門技能等をもって新たな価値を創造することができる専門職業人の養成が急務だ、だから、理論的にも裏づけられた高度な実践力を強みとして、専門業務を牽引でき、かつ、変化に対応しつつ、新たな物やサービスをつくり出すことができる人材を養成するとしております。そして、そのために、産業界との連携や実務家教員の積極的任用を行うというふうにしております。
 私は、この間の質疑、そしてこうした政府の説明を聞いておりましても、結局、どういう大学ができて、どんな教育が行われるのか、今の大学や専門学校、高専、その他の大学校などと何が違うのか、イメージが湧かないのであります。多くの人が恐らくそうではないでしょうか。先日の参考人質疑で来られた小出参考人も、同様の趣旨のことを述べておられました。
 先ほどもありました、設置基準が今後決まっていくということもありまして、文科省のこの間の答弁も、今後の議論でということを繰り返しておられます。なかなか漠然としかわからないという状況になっております。
 一つ一つお伺いしていきたいと思います。
 まず、専門職大学で行われる教育というのは、それぞれの職業分野、産業分野に直結をした、そこで必要となるスキルの教育が行われる、こういう理解で、大臣、よろしいでしょうか。
○松野国務大臣 お答えをいたします。
 産業構造が急激に変化をする中、それぞれの職業分野で業務の改善や革新、新規分野の開拓が求められております。委員から御指摘をいただきましたとおり、高度な実践力と新たな物やサービスをつくり出す創造力を有する人材の育成が喫緊の課題であります。実践的な職業能力を養成するということを目的に掲げておりますので、御質問にありましたとおり、それぞれの産業における実務的な技術を身につけるということが主たる目的でございます。
○大平委員 では、具体的に、今度の専門職大学では、どのような産業分野を文部科学省として想定されているのでしょうか。先日の参考人質疑では、すし職人とか、すしの研究だ、こんなお話もありましたが、局長、いかがでしょうか。
○常盤政府参考人 お答え申し上げます。
 専門職大学は、制度上、医学、歯学、獣医学及び六年制の薬学を除き、対象の職業分野は限定しないこととしております。ただし、基本的な制度設計として、産業界との緊密な連携を要件とするものでございますので、おのずから実践的かつ創造的な人材へのニーズの拡大が見込まれ、その分野の人材の育成が強く求められる、いわゆる成長分野等が中心になると想定をされております。
 具体的には、例えば、観光、食や農業、ITコンテンツ等の分野が考えられるところでございます。
○大平委員 産業分野は特定していないという御答弁でした。
 きょうは総務省にも来ていただいております。今、日本には幾つの産業種があるんでしょうか。御説明ください。
○新井政府参考人 お答えいたします。
 現在、日本標準産業分類というのが定められております。この産業分類は、公的統計を産業別に表示する場合の統計基準でありまして、ここにおける産業とは、同種の経済活動を営む事業所の総合体でございます。
 平成二十五年十月に改定された当該分類におきましては、大分類で二十、中分類で九十九、小分類で五百三十、細分類で千四百六十となっているところでございます。
○大平委員 大分類だけでも二十種類、細分類でいえば千四百六十、こういう御答弁でした。
 そこで、先ほど来ありますような設置基準について私もお伺いをいたします。
 先日の参考人質疑で、中教審の特別部会の座長でもあられた永田参考人は、設置基準について、とりわけ校地、校舎などハード面について問われたのに対し、次のように述べておられます。
 校地、校舎についてはいろいろな条件に鑑みて今後詳細を決める、それは、新しい産業構造、就業構造を考えていくという立場がそこにあるからだと述べられ、さらに、東京や地方など、地域によってもその必要性はさまざまだ、だから、そういうことも踏まえて設置基準を考える必要がある、こういうお話をされておられました。
 文部科学省としても、こうした産業分野ごとによって設置基準を決めていくというふうに考えておられるんでしょうか。
○松野国務大臣 お答えをいたします。
 専門職大学は、産業界と緊密に連携した実践的な職業教育に重点を置き、社会人の受け入れも主要な機能とするなどの特性を有しております。こうした特性を踏まえた設置基準とすることが必要であると考えております。ただし、産業分野ごとに設置基準を制定するものではないと考えております。
 また、専門職大学の設置基準につきましては、国際通用性が求められる大学の枠組みの中に位置づけられる機関として、先ほど御答弁をさせていただきましたとおり、主たる目的としての実践力を身につけることにあわせて、社会の変化に対応していく基礎力を身につけていただくということでございますので、既存の大学、短期大学の設置基準を踏まえつつ、ふさわしい教育研究水準を担保する必要があると考えております。
 このような考えのもと、設置基準につきましては、今後、中央教育審議会において改めて御審議をいただきまして、適切な内容を定めることとしたいと考えております。
○大平委員 産業分野ごとではないという大臣の御答弁だったかと思いますが、まさに中教審の座長を務められた、そして今後の設置基準の検討の中心にもなってこられるんだと思います筑波大学長の永田参考人御自身が、今後詳細を決めるというお話の中で、それは新しい産業構造、就業構造を考えていかなければならない、地域の特性の必要性も加味しなければならないと御発言されていることと今の大臣の御答弁は、ちょっと私、理解できないんですけれども、もう一度お答えいただけますか。
○常盤政府参考人 お答えを申し上げます。
 設置基準でございますけれども、学校の組織や教員、教育課程、施設設備等の諸条件がございます。各学校種ごとの設置基準において、その最低基準を定めているということでございます。したがいまして、大学であれば大学設置基準、短大であれば短大設置基準ということで、学校種に応じて設置基準は定められております。専門職大学の設置基準につきましても、産業分野ごとに定めるものではなくて、共通の基準である専門職大学設置基準を新たに制定したいというふうに考えてございます。
 ただ、先般、部会長のおっしゃった趣旨について、私がその具体的な中身までわかっているわけではありませんけれども、私が推測をいたしますに、この基準の中で、専門職大学の特色である企業内実習の必修化であるとか実習等の授業割合、実務家教員の割合等についても定めることとしているわけでございますが、これらについては、昨年五月の中教審の答申においても、分野の特性に応じた検討も必要とされておりますので、こうした答申の御指摘も踏まえて、分野の特性、あるいは、施設設備などでいいますと、社会人の受け入れの状況とかそういうことも関係してくるかと思いますが、そういう状況を踏まえながら、工夫をしながら、一本化されたものの中で定めていくということをおっしゃったものではないかと思っております。
○大平委員 永田参考人は、校地、校舎についてはということをおっしゃっているんですね。ですから、先ほどの局長の答弁でいえば後半の話になるかと思います。カリキュラムとか教育内容の問題を私は聞いているわけじゃないんですね。
 そこで、具体的に伺っていきたいと思うんですけれども、現行の大学の校地、校舎、それから運動場、体育館、こうしたものの設置基準というのはどういうものになっているのか、御説明いただけるでしょうか。
○常盤政府参考人 大学の校地、校舎等は、質の高い教育研究活動や学生支援、地域との連携などさまざまな活動のために必要なものであり、大学の重要な構成要素であると考えております。
 校舎面積については、学部の種類に応じ、標準的なカリキュラムを実施するために必要な教室等の積算をもとに基準面積を算出しております。
 他方、校地面積や運動場、体育館については、大学では、二十歳前後の学生が大半を占め、人格形成や生涯にわたる学習の基礎を培う機能が重要であること、このため、学生の多様な活動を可能とする空間を保持し、心身の健康の保持、増進等を図る必要があることから、校地面積の基準を学生一人当たり十平方メートルとするとともに、運動場や体育館を原則として設置するということとしております。
○大平委員 大学の設置基準というのは、二十前後の学生たち、若者たちが、教育の内容はもとより、それだけではなくて、サークル活動やあるいは友達との交流、レクでは、お昼に外で、青空のもとで御飯を食べる、そんなためにも必要な敷地面積だ、こんな説明もありました。つまり、大学生活の全体を通して、人間として成長する、学生の全人的な人格形成を促すための基準だというふうな理解をしております。心身の健康の保持、こんなお話もありました。
 しかし、先ほどの御答弁、あるいは中教審の答申などを私読んでおりますと、専門職大学の設置基準については弾力化する、特性に応じたものをつくるということが盛んに強調されるわけなんですけれども、例えば今の校地面積、数値をおっしゃいませんが、十平方メートル、それ以下でもよいとか、あるいは運動場や体育館はなくてもよいとか、こういうものになってしまうんでしょうか。局長、いかがでしょうか。
○常盤政府参考人 専門職大学の備えるべき施設や校地、校舎面積については、昨年五月の中央教育審議会答申においても、大学、短期大学設置基準の水準を踏まえつつ、質の高い職業人養成にふさわしい適切な水準を設定することが提言をされております。
 特に、校地面積や運動場、体育館については、専門職大学の教育活動の特性を踏まえるとともに、社会人への教育を主要な機能に位置づけた機関として、社会人学生の通学、利用の利便性についても考慮し、適切な立地、施設確保等が図られるよう弾力的な対応が可能な基準の設定を行うとされておりますので、今後、こうした答申の趣旨を踏まえつつ、適切な水準について検討してまいりたいと考えております。
○大平委員 ですから、私、聞きました。校地の面積が十平方以下でもよいとか、運動場、体育館がなくてもよいということになってしまうんじゃないかということについての明確な御答弁はありませんでした。専門職大学も当然大学なわけでして、大学として学生の成長を支える責任がある、これは言うまでもないことだと思います。
 それからさらに、社会人の受け入れということが繰り返し、この質問をいたしますと強調されるわけですけれども、しかし、十八歳、二十前後の若者たちがこの専門職大学にも当然来るわけでありますし、あるいは反対に、既存の大学でも、今現在、社会人の受け入れを非常に重視もし、力を入れているところもある。しかし、既存のそういう大学でも、今の大学の設置基準をきちんとクリアして、きちんと設置をしているわけです。
 それを、専門職大学だからと、何だか社会人の入学が多いからだということが繰り返し答弁をされ、そういう特性に合わせて弾力化もしていくということは、社会人の受け入れを強調すればするだけ、この専門職大学に通う学生は、例えば、先ほど設置基準の御説明をいただきましたけれども、サークル活動など多彩な活動を可能にする空間、そのために今の設置基準があるという御説明でしたけれども、専門職大学に通う学生というのは、では、そういう多様な活動をしなくてもいいということになってしまうんじゃないか、こういう不安の声があるわけです。大臣、いかがでしょうか。
○常盤政府参考人 先ほども申しましたように、校地面積や運動場、体育館については、専門職大学の教育活動の特性を踏まえる、あるいは社会人への教育を主要な機能に位置づけた機関ということでの要素等を考慮いたしまして、弾力的な対応が可能な基準の設定を行うとされているところでございます。
 同時に、中央教育審議会の答申においては、大学、短期大学設置基準の水準を踏まえつつということで、国際通用性が求められる大学の枠組みの中に位置づける機関としてのふさわしい水準ということも言っているわけでございますので、その両者の兼ね合いの中で適切な基準を定めてまいりたいというふうに考えてございます。
○大平委員 大学は、先ほど来からありますとおり、カリキュラムとか教育内容、そういう、ソフトというんですか、教育内容の面だけではなくて、先ほどの校地や校舎の面、こうしたハードの面においても十分な教育条件を整えることで、その両面において学生たちの成長を支えている、それが大学だ、設置基準の御説明でもそうだったというふうに思います。どちらかが高ければどちらか一方が低くていい、こんな話にはならないのは当然だというふうに思います。
 設置基準の問題で、大臣に、最後に伺いたい。
 結局、大学の設置基準が、弾力的な対応とか、それぞれ産業ごとの特性に応じた対応だ、こういう名のもとに、永田参考人からもありました、産業ごとに合わせてとか、あるいは地域の特性も加味して、こういうことで設定をされるということになれば、この法案によって、専門職大学の設立によって、現存する大学の設置基準が緩和される、質の低下が起こるということになるんじゃないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
○松野国務大臣 政府参考人からお答えをさせていただいたとおりでございますが、その中にもありましたとおり、基本的には大学、短大の設置基準を踏まえるということが挙げられております。その中において、専門職大学、専門職短期大学の特性に応じて弾力化をするということでございますから、当然、学生生活が十分に快適に送れるということは保証されるものであると考えております。
○大平委員 先日の参考人質疑におかれましても、小出参考人や本田参考人もこの点での懸念の表明をされておられました。今度のこの法案で、先ほど来から議論が集中していることも、私はそういう反映だと思いますが、多くの大学関係者の皆さんが不安に感じておられます。
 もちろん、今の大学でも、分野ごとによっていろいろな幅がある、共通したものをつくった上で、学部ごとやそういうものによって幅があるということは私も承知しておりますが、しかし、これから検討される今度の専門職大学の設置基準は最低限の基準を下げることがあってはならないということを重ねて指摘しまして、次の質問に移りたいと思います。
 今、専門職大学の要件として比較的具体的になっていることは、例えば卒業単位のおおむね三割から四割以上を実習などとする長期の企業内実習を行うこと、また、必要専任教員の四割以上を実務家教員にすること、産業界等と連携をした教育課程の編成、実施、評価を行うことなどであります。
 産業界との連携を義務づけるというのは、大学の自主性との関係でどうなのかという思いはありますが、それはおいておいても、ここで挙げられていることは、私は全く新しいことではないというふうに思っております。
 参考人質疑の際も伺いましたし、先ほど来からの質疑の中でもありましたが、重ねて伺いたい。こうしたことは既存の大学などではできないと文部科学省はお考えでしょうか。
○常盤政府参考人 大学は、専門教育と教養教育や学術研究をあわせて行うという機関の性格から、比較的学問的色彩の強い教育が行われる傾向にあります。
 一方、専門職大学は、特定職種における業務遂行能力の育成に加え、特に、企業での長期実習や関連の職業分野に関する教育等を通じ、高度な実践力や豊かな創造性を培う教育に重点を置く点で特色を有するものになります。
 大学においても各大学の判断で実践的な職業人材の養成は可能であると考えますが、社会の要請により的確に対応していくためには、実践的な職業教育に重点化した高等教育機関を制度化することが効果的であると考えております。
 専門職大学の制度化によりまして、既存の高等教育機関がそれぞれの強みと特性を生かして行う職業教育と相まって、専門職業人材の養成強化が図られるものと考えております。
○大平委員 可能だという御答弁でした。現行でも制度として行えるというわけですから、それを行っている大学や専門学校などをどう支援していくのか、これが私は最も重要だというふうに考えております。
 その点で指摘をしなければならないのが、国の高等教育予算の少なさからくる財政的支援の不十分さであります。この点は参考人の方々も、専門職大学ができることで予算がさらに少なくなるのではないか、こうした危惧を含めて、現行の教育予算が全く不十分だ、このことへの怒り、憤りの思いを異口同音に語っておられました。ここを改善していくことこそ急務だと私は訴えたいと思います。
 そこでまず、私立大学の問題からお伺いしたいと思います。
 改めて確認ですが、一九七五年に制定をされた私立学校振興助成法の附帯決議では、私立大学に対する国の補助を速やかに二分の一にすると定めておりますが、現在、直近の数字で、私学に対する経常費補助率は何%になっているでしょうか。
○村田政府参考人 お答え申し上げます。
 私立大学等における経常費経費に対する、私立大学等の経常費補助の割合でございますけれども、直近の平成二十七年度の数字で九・九%でございます。
○大平委員 わずか九・九%。二分の一、五〇%を目指す、速やかにしていくとしながら、とうとう一割を切っているというのが現状であります。
 そのもとで、私は以前の本委員会でも紹介をしましたが、この予算額の範囲におさめるためにということで、各大学の申請額に三割以上もの圧縮率を掛けてカットしているということさえ起きております。やはり私学助成を抜本的に引き上げて、大学がきちんと教育研究を行える環境をつくっていくことが何よりも求められていることだと思います。
 しかし、そんな中、今月の二十五日に行われた政府の経済財政諮問会議では、大学改革についてがテーマとなり、民間議員から、私立大学向けの助成金も成果に応じて配り、歳出を抑制する、成果の乏しい大学の淘汰を促すなどの提言、発言が行われたと新聞各社で報じられております。
 大臣、文部科学省もそのようなことを考えているんでしょうか。
○松野国務大臣 四月二十五日に開催をされた経済財政諮問会議において、有識者議員から、私学助成について教育成果を反映した大胆な傾斜配分を行うなど仕組みの見直しを行うべきとの提案がなされたことは承知をしておりますが、報道にあるように、私学助成を抑制するということが議論をされたわけではありません。
 この会議において、私からは、高等教育システム改革、教育研究の質の向上、高等教育への格差の是正、これらの一体改革に取り組み、特色ある足腰の強い大学が質の高い教育研究を展開するとともに、意欲と能力ある全ての人が高等教育にアクセスできる社会の実現を目指すことを述べたところであります。
 このような高等教育改革を進めるに当たり、私立大学は引き続き重要な役割を果たすものであり、文部科学省としては、私立大学が社会や時代のニーズを踏まえた特色ある教育研究を実施するとともに、学生の経済的負担の軽減が行えるよう、引き続き、私学助成の確保に努めてまいりたいと考えております。
○大平委員 発言されたことは承知をしているが、抑制について議論をされているわけではない、引き続き確保を目指す、これが文科省の立場だということで、今の御答弁だったというふうに思います。
 この間、傾斜配分といいますと、国立大学法人に対する運営費交付金の問題で既に傾斜配分が大きく進められている。そうした中で、各国立大学法人では、現状では、新年度に向けての人件費を見込むこともできない、人事の凍結などが現に起きている、将来の日本の研究力の維持発展にとっても憂慮すべき状況となっている、多くの方から危惧の声が寄せられております。
 高等教育の大部分を占める私立大学でも同様の仕組みが導入され、強まっていけば、そのマイナスの影響ははかり知れない、私は、こんなことは絶対に許してはならないというふうに思って読みました。
 さらに、この会議では、それだけではなくて、組織再編についても議論になったと伺っております。例えば、国公私立の枠を超えた経営統合や再編、あるいは国立大学法人が複数の大学を傘下に持てるようにする、そういう仕組みが必要だ、こういう提言もされました。
 大臣、これは、文部科学省は検討されようとしておるんでしょうか。
○松野国務大臣 十八歳人口や経済社会の変化の中で、今後の成長を担う質の高い人材育成を進めるためには、今後の高等教育の規模も視野に入れた、地域における質の高い高等教育機会の確保のあり方について検討する必要があると考えております。
 このため、ことし三月に、中央教育審議会に対して、「我が国の高等教育に関する将来構想について」を諮問し、その中で、国公私の設置者の枠を超えた連携、統合等の可能性の検討をお願いするとともに、先日の経済財政諮問会議においても、改革の方向性の中でお示しをしたところであります。
 大学の連携、統合に関しては、国立大学の一大学一法人制度を見直すことや、複数の大学がネットワークを組んで連携して存立していくことなども含め、多様なあり方が想定されるところであり、今後、中央教育審議会において専門的な議論を進めていただきたいと考えております。
○大平委員 国公私立の枠を超えた再編統合を検討しているという御答弁でした。
 歴史や経過も、あるいは役割も違うものを一緒くたにしてしまうというような、私、こういう議論は余りにも乱暴な議論ではないかというふうに思います。
 先ほどの御答弁にもありましたが、十八歳人口が減少し、地方の小規模大学を中心に定員割れも多くのところで起こっている。こういうのが、諮問会議に示された文部科学省の資料も私は読みましたけれども、詳細なグラフなども示しながら論じられておりますが、現状を追認するということであればそうですが、やはり文部科学省自身も、今よりも進学率を上げようということでさまざまな施策に取り組んでいる、そういう中において、減少するから、定員割れが起こるから統合再編だということは、私はどうかなと感じざるを得ない。
 進学率の問題、もう少し私は聞いていきたいと思いますが、今、都道府県ごとの進学率はどうなっているか。直近の数字で、大学進学率が最も高かった都道府県と最も低かった都道府県の進学率、県名を含めてお示しいただけますか。
○村田政府参考人 お答え申し上げます。
 平成二十八年度の数字でございますけれども、都道府県別の国公私立を合わせた大学進学率について申し上げますと、一番高い数字が東京都で六四%、一番低い数字で申しますと、鹿児島県で三一%となっているところでございます。
○大平委員 都心の進学率は高いが、地方に行けば行くほど低くなるという傾向であります。こうした地域間格差の是正も含めて、進学率を上げていくということが今非常に求められている。
 その点で、一つ、示唆的な数字がございます。
 この間、幾つかの経営困難な私立大学が公立大学へと移行をしております。私、これが必ずしもいいことだとは思いませんが、今現実に起きている。文部科学省の調べで、鳥取環境大学や高知工科大学など七校が私立から公立へと移行しております。
 そこでお伺いしますが、これらの大学の志願倍率が公立化前と公立化後にどのように変わったか、端的に、数字だけで結構です、七校、お示しいただけますか。
○常盤政府参考人 お答えを申し上げます。
 私立大学から公立大学となった大学数は、平成二十九年度からの一大学がございますので、現在、八大学となっております。
 一般入試における、私立から公立に転換した大学の倍率について申し上げますと、公立化前年度の志願倍率と公立化後初年度の志願倍率で申し上げたいと思いますが、高知工科大学については、二・〇一倍が一九・五五倍となっておりますが、その後は平均すると約七倍という状況でございます。
 以下、公立化の前年度と公立化後の初年度について端的に申し上げます。
 名桜大学は一・二一倍が四・四八倍、静岡文化芸術大学は十・一一倍が十三・七一倍、公立鳥取環境大学は二・七三倍が十四・五四倍、長岡造形大学は四・七一倍が七・〇三倍、山陽小野田市立山口東京理科大学は九・九六倍が三十三・一九倍、福知山公立大学は一・八〇倍が三十七・三六倍、長野大学は四・〇三倍が二十四・八七倍となっております。
○大平委員 軒並み大幅に上がっております。高知工科大学は九・七二倍になる、福知山公立大学では二十・七五倍も上がっている。この要因は何かと考えますと、私はやはりお金の問題、学費の問題が大変に大きいというふうに思います。
 各大学の授業料の変化について、これも端的に、数字だけで結構です、お示しください。
○常盤政府参考人 お答えを申し上げます。
 私立大学から公立大学となった大学、先ほど申しましたように現在八大学でございますけれども、私立大学から公立大学となった八校についての授業料でございます。
 公立化一年目の授業料は、長野大学が五十八万円でございますけれども、その他は全て五十三万五千八百円でございます。ですので、公立化前の年がどうであったかということを申し上げたいと思います。
 高知工科大学九十四万円、名桜大学九十万円、静岡文化芸術大学五十三万五千八百円、公立鳥取環境大学八十万円、長岡造形大学九十七万六千円、山陽小野田市立山口東京理科大学八十万四千円、福知山公立大学六十九万円、先ほど申しましたように、長野大学は五十八万円が五十八万円ということでございます。
○大平委員 授業料も軒並み下がっております。高知工科大学でいえば九十四万円が五十三万五千八百円、長岡造形大学でいいますと九十七万円が五十三万五千八百円と、約半額近く下がっている。これは授業料ですから、これにさらに入学金や施設整備費なども加えますと、総額で見ればさらにその下げ幅というものは大きくなってまいります。
 格差と貧困が大きく進む中で、大学を選ぶ上でのお金の面というのは、言うまでもなく、重要な判断基準となっております。実際に学費が下がることで入学希望者がふえるということがこうした実例から見ても明確に示されていますので、こんなことをしなくても各私立大学が額引き下げを行えるように、私学助成を抜本的にふやしていく、進学率の向上につなげていくということが今何よりも求められている方向だというふうに私は訴えたいと思います。決して、諮問会議で議論がされたような、私学助成の抑制とか経営統合などではないということを、私ははっきりと指摘しておきたいと思います。
 次に、専修学校、専門学校についてお伺いしたいと思います。
 専門学校は、実践的な教育から教養教育まで幅広く行いながら、同時に、特定の職業に直結する教育も行っております。高等教育段階における職業教育を担う重要な役割を果たしておられます。
 そこで、確認ですが、現在の専門学校の数、高校などからの進学率、高等教育学生のうちの専門学校生の割合をお示しいただけますか。
○有松政府参考人 お答え申し上げます。
 専門学校、すなわち専修学校の専門課程でございますが、この学校数は二千八百十七校、新規高等学校卒業者に占める進学率は一六・三%、そして大学等も含めた高等教育機関全体に占める学生数の割合は一六・四%となっております。
○大平委員 大臣に伺いたいと思いますが、こうした専門学校の役割をどのように御認識されておられるでしょうか。
○松野国務大臣 文部科学省では、昨年度、専修学校教育の振興策を検討するための有識者会議を開催し、その中で、専門学校の社会的な役割や機能についても確認をしたところであります。
 すなわち、専門学校は、昭和五十年七月の学校教育法の改正により制度化され、以来約四十年にわたり、その柔軟な制度的特徴を生かし、社会の変化に即応した実践的な職業教育により、地域産業を担い、実践的に活躍する専門職業人の養成を担ってきたところです。
 今後とも、その制度の特質を維持しつつ、職業能力の育成等を目指した実学の学校として、専門職業人の養成において重要な役割を果たしていくことが期待されるものと考えております。
○大平委員 そもそも、今回の法改正も、大もとの出発点は、専修学校、専門学校の質向上、支援拡充の要求であったと私は理解しておりますが、今回の専門職大学に専門学校からの移行がどの程度見込まれるのか。先ほどの議論にもありました、その移行は極めて限定的だ、こういう答弁もありました。
 つまり、今回の法案は専門学校全体の質向上などにつながるものではありません。今回の制度設計は、私は、専門学校からの願いともずれているということも指摘しなければならない。しかし、職業教育の意義を確認し、充実させていこうと考えるならば、やはりここでもそうした教育を担っている専門学校をどう支援していくのか、これが必要だ、重要だというふうに思います。
 そこでお伺いしますが、専門学校の今の平均的な授業料と入学金について御説明ください。
○有松政府参考人 お答え申し上げます。
 私立専門学校の平均的な授業料等の状況についてでございますが、平成二十六年度におきまして、授業料は平均で約六十一万円、入学金は約十七万円となっております。
○大平委員 それに加えて施設整備費が約三十三万円とありますので、平均ですが、合計すると、初年度にはおよそ百十万円、それ以上かかるということになっております。国立大学の初年度納付金が約八十二万円、私立大学の平均が百三十万円ということですから、私立大学に近い額の初年度納付金、専門学校もそういうことになっております。
 一方、専門学校にはどのような学生たちが通っているのか。専門学校に通う学生の家庭の収入で年間三百万円に満たない世帯の学生というのがどのぐらいいるでしょうか。
○有松政府参考人 お答え申し上げます。
 専門学校生につきまして、家庭の年間収入が三百万円未満の世帯の学生数の割合でございますが、平成二十五年度におきまして全体の約一八%となっておりまして、低所得世帯が比較的多くなっているところでございます。
○大平委員 三百万円以下の低所得者世帯から通う学生が約一八%、二割弱だという御答弁でした。大学で見ますと、これは七・九%ですから、専門学校に通うその割合は倍以上であります。専門学校は、まさにこうした低所得者層を含む多様な若者たちの受け皿になっているというのが現状であります。
 しかし、そんな中で、国からの専門学校への財政的支援は今どうなっているか。専修学校、専門学校への今年度の予算額の御説明をいただけますか。
○有松政府参考人 お答え申し上げます。
 平成二十九年度の専修学校関係予算といたしましては、三十五・九億円、これは対前年度で約七千万円増でございますが、三十五・九億円を計上しております。
 具体的には、まず第一として、人材養成機能の向上という観点から、産学連携による教育プログラムの開発、実証に取り組むとともに、新たに、産学連携体制の整備や、Eラーニング等を活用しました学び直し講座の開設の支援、さらには総合的な留学生施策の推進に向けた支援、これが第一でございます。
 第二には、質の保証、向上の観点から、文部科学大臣認定制度であります職業実践専門課程における第三者評価の検証を行うとともに、新たな教員の研修体制づくりの支援。
 そして三つ目には、学習環境の整備の観点から、専門学校生への効果的な経済的支援のあり方に関する実証研究や、私立学校施設設備等の補助などを計上しております。
○大平委員 専門学校は二千八百校ある、専門学校生は五十九万人いるという中での、こうした極めて乏しい予算となっている。
 最後に大臣にお伺いしたいと思いますが、職業教育は大事だ、専門学校の社会的認識を高めていくんだと。先ほど専門学校の役割というお話もありました。そうであれば、やはり何よりも、現行の大学、専門学校に対するより充実した支援の枠組みをつくっていくことこそ求められていると思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○松野国務大臣 お答えをいたします。
 我が国の持続的な成長、発展や一人一人の豊かな人生を実現させていくためには、教育投資の充実により高等教育の質を向上させていくことが重要だと考えております。
 このため、平成二十九年度予算においては、大学の基盤的経費である国立大学法人運営費交付金等については対前年度二十五億円増の一兆九百七十億円を計上するとともに、私立大学等経常費補助についても前年度と同額の三千百五十三億円を計上しているところです。
 専門学校については、人材養成、質保証、向上、学習環境の三つの観点から支援を進めており、平成二十九年度予算としては、対前年度約七千万円増の三十五億九千万円を計上しているところであります。
 今後とも、各高等教育機関において質の高い教育が推進されるよう、必要な予算の確保に取り組んでまいります。
○大平委員 日本共産党は、十年かけて学費を半減するという政策を掲げておりまして、こうした中には専門学校も当然入っている。今こそ、こういう方向にかじ取りを……
○永岡委員長 申し合わせの時間が来ておりますので、手短に。
○大平委員 切りかえるべきだということを申し上げて、きょうの質問を終わります。
 ありがとうございました。