国会質問

2017年06月12日

身勝手な鉄道路線廃止を認めない制度を(5月19日国土交通委員会)

衆議院会議録情報 第193回国会 国土交通委員会 第17号

○大平委員 日本共産党の大平喜信です。
 昨年の同委員会でも質問をさせていただきましたが、私は、きょう、JRの三江線、そしてローカル線廃止の問題について伺いたいと思います。
 昨年九月三十日に、JR西日本から国交省運輸局に、三江線を二〇一八年四月一日をもって廃止するとの届け出が出されました。JR西日本は、三江線廃止の理由の一番目に、鉄道輸送の特性が発揮されないと述べています。日本国有鉄道経営再建促進特別措置法では、輸送密度四千人未満の路線を特定地方交通線と分類し、廃線にしてバスなどへの転換をしました。
 そこでお伺いいたしますが、現在、JR各社が保有する路線の中で、輸送密度が四千人未満のものが幾つあるでしょうか。
○奥田政府参考人 お答え申し上げます。
 JR各社の平成二十七年度におけます輸送密度四千人未満の路線は、JR北海道が十九線区、JR東日本二十九路線、JR東海六路線、JR西日本二十一路線、JR四国六路線、JR九州十一路線の合計九十二線区・路線でございます。
○大平委員 九十二本ということであります。
 さらに、路線全体では輸送密度が四千人以上だとしても、一部区間だけ取り出すと輸送密度が四千人未満というところも少なからずある。それも含めると、さらにこの数はふえるというふうに思います。
 現に、例えば、私の地元広島の可部線は、全体では輸送密度も伸びて黒字でしたが、赤字の部分だけ取り出して廃線ということが行われました。今後、JR各社がこうした輸送密度の低い路線を廃止していくのではないかとの懸念が大きく広がっております。
 例えば、私の地元でも、広島市から三次市、庄原市を結び、岡山県の新見市まで続く芸備線や、福山市から府中市を通って三次市につなぐ福塩線、あるいはまた、島根県松江市から雲南市を通って庄原市へと結ぶ木次線、こうした路線などが三江線同様に輸送密度としては低く、次はこれらが廃線になってしまうんじゃないかと言われております。
 中国地方の中山間地域の広島県内を走る路線がなくなってしまうのではないかという強い懸念、不安の声が地元の皆さんから寄せられております。全国でもさらに同じことが行われるとすれば、日本の鉄道路線は新幹線と都市圏しか残らないということになってしまう。
 大臣にお伺いしたい。国交省は、こうした事態が起こるのを黙って認めるのでしょうか、いかがでしょうか。
○石井国務大臣 JR各社は、国鉄改革の経緯を踏まえて、現に営業している路線の適切な維持に努めるとともに、路線を廃止しようとするときは、国鉄改革実施後の輸送需要の動向、その他の新たな事情の変化について十分に説明する必要があるとされているところであります。
 このような中、国鉄改革実施後における地域の人口減少やマイカー等の他の交通手段の発達に伴い、輸送人数が大きく減少し、鉄道の特性が発揮しづらくなっている路線については、鉄道事業者を初めとする地域の関係者が一体となって、利用促進のための取り組みや輸送需要に応じた適切なダイヤ設定など、鉄道を持続的に運営するための方策や、地域にとってより効率的で利便性の高い交通サービスのあり方など、それぞれの地域に適した持続可能な交通体系のあり方について議論していただくことが重要であると考えております。
 国といたしましても、鉄道のあり方も含めまして、地域の実情に応じた公共交通のあり方について、地域における関係者の間で十分に議論がなされるよう、必要な支援をしてまいりたいと考えております。
○大平委員 実際に、JR北海道は、経営難ということで、路線の大幅な廃止縮小を既に検討を始めている。
 また、事業者自身はどう言っているか。JR西日本の社長自身が、昨年九月の中国新聞のインタビューに対して、輸送密度四千人以下の路線はいずれも大量輸送という鉄道としての特性が発揮できていないと述べ、さらに、ことし四月には、毎日新聞のインタビューで、輸送密度五百人を切っている路線では、あるべき交通体系を議論する必要がある、三江線のように鉄道を廃止して小型バスに転換するのも選択肢の一つだと、はっきり社長自身が述べております。先ほど紹介しました木次線などは、まさに輸送密度五百人以下という路線に該当する一つです。
 今の法律では、廃線をするかどうかというのは、まさに決めるのは鉄道事業者であって、国は意見を言うことすらできないというふうになっている。
 前回の質問でも、私、この問題を大臣にお聞きしまして、大臣は再三にわたって、今もおっしゃいました、地元との丁寧な協議を、こういうことであります。また、ことしの二月十七日、衆議院の予算委員会でも、我が党の本村伸子議員の質問に対し、大臣は、これは三江線に限定した話ではありませんが、「路線の廃止に当たりましては、地域の関係者に十分な説明を行い、」「最終的には地域の皆様に御理解をいただきながら行われたもの」と考えていると答弁をしておられます。
 この三江線、少なくない沿線住民の皆さんが存続を希望し、私も実際に乗車して、利用されている方たちにもお話を聞きました。沿線自治体、三市三町の首長はこぞって存続を求めた。こうした中で、昨年の九月一日に、JR西日本が、三江線の鉄道事業はどのような形態であっても行わないと表明した。それ以降の沿線の住民説明会でも、地元住民の皆さんからは、結局、JR西日本は廃止ありきだったのではないか、こうして、JR西日本への大きな怒り、失望の声が多く出されました。
 大臣、こうした住民の皆さんの声、地元の皆さんの声を前にしても、廃止に至る過程において十分で丁寧な協議が行われたと言えるでしょうか、いかがでしょうか。
○石井国務大臣 JR西日本におきましては、三江線の沿線自治体と協力して、平成二十三年度から五年にわたり、同線の利用促進や活性化の取り組みを行ってきました。
 それでもなお厳しい利用状況を踏まえまして、JR西日本は、平成二十七年十月、沿線自治体に、持続可能な地域の公共交通の構築に向けた検討を開始したい旨を伝え、その後、平成二十八年二月から六月にかけて、沿線六市町、JR西日本、島根県及び広島県をメンバーとする検討会議が計十回開催されたと承知しております。
 その結果を踏まえ、JR西日本は、利用者数が少なく、鉄道の特性が発揮できていないこと、ちなみに、この三江線の一日一キロ当たりの平均利用者数、輸送密度は、平成二十七年度で五十八人でございます。また、活性化の取り組みを行ってきたものの、引き続き厳しい利用状況であることなどから、平成二十八年九月一日に、三江線を廃止したい旨を沿線自治体に伝え、これを受け、同年九月二十三日、沿線自治体が廃止を受け入れたものと承知しております。
 また、廃止時期につきましては、沿線自治体の要望を受け、平成三十年四月一日としているところであります。
 このように、JR西日本においては、三江線の廃止に当たり、沿線自治体と丁寧に協議を進めてきたものと考えております。
○大平委員 全く認識が違うと言わなければなりません。
 丁寧な協議、あるいは、先ほど地域の関係者が一体となってというふうに大臣おっしゃいますが、私が伺う中では、皆さん怒っている、全く一体となっていない。
 しかも、廃止を受け入れた、こういう御答弁が大臣からありましたが、例えば、島根県の溝口善兵衛知事は、我が党県議の質問に答えて、廃止決定は残念だが、現在の制度では撤回させる法制度がない、このように答弁をしておられます。
 大臣は、地元とよく協議をとおっしゃるんですが、現在の仕組みのもとでは、届け出を出せば鉄道会社が一方的に廃止できるため、地元住民あるいは地元自治体の皆さんは、JR西日本は何を言っても聞いてくれない、こういう思いになっているんです。先ほどバス転換の条件整備というお話がありましたが、条件整備のためには廃線を受け入れざるを得ないというふうになっているのが、今の仕組みのもとでの地元の皆さんのこうした思いなわけです。これが実態だと言わなければなりません。
 結局、ローカル線の廃止の問題も、そして住民の皆さんとの協議の問題も、国民の足である鉄道の存廃を事業者任せにし、国として明確な方針を持たないことがこの問題の根本にある。民営化の際も、また届け出制への変換の際も、我が党は、ローカル線の切り捨てにつながると再三警告を行ってきました。大臣、まさにそれが今現実になりつつあるではありませんか。
 そもそも、JR西日本が今のようにやっていけているのは、決してJR西日本の力だけではありません。
 確認ですが、国鉄改革の際、JR各社が路線を適切に維持できるようにと、債務の負担のあり方を含め、どういう制度設計をしてきたでしょうか、お答えください。
○奥田政府参考人 お答え申し上げます。
 国鉄改革におきましては、全国一元的な経営形態を改め、適切な経営管理でありますとか地域の実情に即した運営ができるようにするとともに、旅客の流動実態に適合し、地域的に自然な形の分割となるよう、旅客流動の地域内完結度に配慮して、旅客部門は全国六社に分割されたところでございます。
 その際に、JR各社が最大限の効率的経営を行うことを前提として、当面収支が均衡し、かつ、将来にわたって事業を健全かつ円滑に運営できる限度において、長期債務を負担することとされました。
 具体的には、当時の予測をもとにして、JR各社が効率的な経営を行うとした場合に、昭和六十二年度において、収入の一%程度の経常利益を上げることができるとの前提で、負担できる利子負担の額を算定し、その利子額に応じて長期債務を負担することとされたところでございます。これによりまして、JR本州三社及びJR貨物は、合計五・九兆円の長期債務を負担し、発足することとなったということでございます。
○大平委員 一%程度の利益を上げることを想定し、その計算で国鉄の債務を負担させたと。債務が当時約三十七兆円あったわけですが、先ほどありましたJR全社で五・九兆円、そのうち、JR西日本は一・一兆円の負担をした、こういうことであります。
 そのもとで、JR西日本は、現在、過去最高の収益を上げているわけですが、最新の決算で経常利益率はどれぐらいになっていますか。
○奥田政府参考人 お答え申し上げます。
 JR西日本の平成二十八年度決算の実績は、単体で、売上高、営業収益は九千五百六十一億円、営業利益千三百五十四億円、経常利益千百八十四億円、売上高経常利益率一二・四%となっております。
 また、連結では、売上高が一兆四千四百十四億円、営業利益千七百六十三億円、経常利益千六百七億円、売上高経常利益率一一・一%となってございます。
○大平委員 一%の経常利益を見込んで、JR西日本には、三十七兆円の債務のうち一兆円を求めた。しかし、実際は、その見込みよりも十二倍以上も利益を上げている。莫大な利益を上げているわけです。
 一方で、JRが負担しなかった残りの二十五兆五千億円、この借金はどのようになったでしょうか。
○奥田政府参考人 お答え申し上げます。
 国鉄長期債務のうち、JR本州三社及びJR貨物並びに新幹線鉄道保有機構が承継した債務を除きました二十五・五兆円の債務につきましては、国鉄清算事業団が承継することとされ、国鉄から承継した土地の処分やJR株式の売却による収入等によって、可能な限り処理することとされたところでございます。
 しかしながら、国鉄清算事業団の発足後に発生いたしました地価高騰問題に対処するため、土地の売却が見合わせられ、その後、バブル経済の崩壊に伴う土地需要の低迷により、土地売却が順調に進まず、かつ、地価の下落により土地売却収入が減少したことや、株式につきましては、株式市況の低迷などによりまして売却が順調に進まなかったことなどから、平成十年十月の段階で、国鉄清算事業団の債務は二十八・三兆円となったところでございます。
 このため、平成十年十月に国鉄長期債務の最終的な処理が行われ、国鉄清算事業団の二十八・三兆円の債務のうち二十四・一兆円については、国の一般会計が負担することとされたところでございます。
○大平委員 結局、二十五兆円の債務のうち二十四兆円、ほとんど全て、大部分を国が負担することになりました。
 この国鉄債務の国負担分二十四兆円が、有利子債務、無利子債務あるわけですけれども、有利子債務の利子も含めて国民の税金で支払いがされ、これらを毎年度にならしますと、毎年約五千億円近く、国民がこの利子と債務の支払いに負担をしていることになる。まさに、現在のJR各社があるのも、国民の巨額の負担の上に成り立っているのであります。
 そうであるにもかかわらず、路線の廃止に関しては住民や自治体は何の権限もないというのは、余りにもおかしな話ではないでしょうか。
 島根県の溝口知事は、昨年の十月十四日、国の許可なしに事業者が路線を廃止できる現行の鉄道事業法の見直しを国交省鉄道局長に直接要望しています。鉄道の存廃、交通権の確保というのは、国民、住民の暮らしにかかわる重要な問題です。国鉄改革以降の経緯に照らしても、また、住民との十分な協議というのであれば、大臣、こういう地方自治体や住民の切実な要望に応えるべきではないか。
 事業者の自由な鉄道廃止に歯どめをかけるために、鉄道事業法を見直し、事業の廃止を届け出制から許可制に戻すことを求めます。いかがでしょうか。
○石井国務大臣 鉄道路線の廃止につきましては、鉄道事業法上、事業者による事前届け出制になっておりますが、これは、平成十一年の鉄道事業法の改正において、需給調整規制を廃止する観点から、鉄道事業の参入について免許制から許可制とされたことにあわせ、退出についても許可制から届け出制とされたものであります。退出についてのみ許可制とすることは、制度全体の整合性を欠くことになるものと考えております。
 なお、鉄道事業の廃止に当たっては、鉄道事業者において、地域に対して丁寧な協議を行い、その理解をいただきながら廃止の届け出が行われることが一般的であります。
 国土交通省といたしましては、鉄道事業者に対して、路線の廃止に際しては地域に丁寧な説明を行っていくよう、引き続き必要に応じて指導助言してまいりたいと考えております。
○大平委員 そうなっていないのが実態なんですよ。地元の声、地元自治体の声をどうして受けとめないか、国の責任放棄の姿勢を厳しく問わなければならないと思います。
 全国鉄道路線網を維持し、未来に引き継ぐことは、今日の政治の重要な役割であり、責任である。この立場から、日本共産党は先日、鉄道政策についての提言も発表しました。国民の移動の権利、交通権を保障するとともに、地方再生の資源を守り、大都市と地方の格差拡大に歯どめをかけるために、日本共産党は今後とも全力を挙げる決意を申し上げて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。