国会質問

2015年03月20日

住宅再建できるまで被災者支援の拡充を(災害特別委員会)

大平委員 おはようございます。日本共産党の大平喜信です。
photo-12 昨年の総選挙で中国ブロックから初当選をさせていただきました。広島県の出身です。
 昨年八月二十日未明に発生した、死者七十四人、四千七百を超える家屋損壊をもたらした広島市北部の豪雨土砂災害から、きょうでちょうど七カ月となりました。改めて、亡くなられた皆さんへの哀悼の意をあらわすとともに、被害を受けられた多くの方々へ心からのお見舞いを申し上げます。
 私は、日本共産党広島県委員会の土砂災害対策本部副本部長として、この災害が起きた直後から、被災地のお宅一軒一軒を伺い、お見舞いを申し上げながら、御要望を聞き取る活動に地元の皆さんと取り組んでまいりました。一カ月で二千四百四十九軒を訪問し、寄せられた声をまとめて広島市や県、また国に届け、改善を求める活動も行ってきました。
 そうした声は、先日、山谷大臣にも直接届けさせていただきました。その後も私は、この七カ月間、毎月被災地を伺って、被災者の皆さんから、その都度、お困り事や御要望などを聞いてまいりました。きょうは、現時点で問題になっていることについて、現場の実態も紹介をしながら質問をいたします。
 安佐南区の緑井七丁目に住むある被災者の方は、この地域に住んで十九年、今度の災害が起こるまで、土砂災害の危険性について考えたこともなかったし、行政からの説明もなかった、避難訓練も一度もやったことがなかったと話しておられました。
 既に指摘をされているとおり、今度の災害で大きな被害のあった安佐南区の緑井地域そして八木地域いずれも、行政は、基礎調査をし、危険性を知っておきながら、土砂災害防止法が定める土砂災害警戒区域にも、また特別警戒区域にも指定されていませんでした。警戒区域の指定が宅地開発の後追いとなり、土砂災害の危険を放置したと言われても仕方がありません。
 土砂災害防止法の改正した内容も含めて、今回の事態を政府としてどのように受けとめているのか、最初にそのことから確認をしたいと思います。
池内政府参考人 お答えいたします。
 安佐南区の緑井、八木地区におきましては、御指摘のとおり、平成二十六年三月までに基礎調査は完了しておりましたが、八月時点で警戒区域等は未指定となっておりまして、住民の方々に土砂災害の危険性が十分に伝わっておりませんでした。
 このため、土砂災害防止法を改正いたしまして、基礎調査結果の公表を都道府県に義務づけますとともに、法に基づく基本指針において、おおむね五年程度で完了させることを目標とするなど、基礎調査の促進を図ることとしております。また、土砂災害警戒情報の市町村長への通知の義務づけや安全な避難場所の確保など、避難体制の充実強化を図ることといたしました。
 国土交通省といたしましては、改正土砂災害防止法に基づきまして、土砂災害対策の推進に努めたいと考えております。
 以上でございます。
大平委員 まさに住民の皆さんにとっては、何も知らされることなく、今のこの場所に住み続け、日々暮らしていたところに、突然八月二十日を迎えた、そんな状況だったわけです。
 ある被災者の方は、全く情報がないままに、のうてんきに、平和に、のんきに暮らしていたと表現をされておられました。危険地域であるにもかかわらず、宅地開発を野放しにして、そのもとで起きたのが今度の土砂災害でした。
 もう一つ確認ですが、この災害が起こる前、安佐南区の八木地域には、国として、九つの危険渓流に九基の砂防ダムを整備するという計画を二〇〇一年から持っていたと聞いています。その整備計画が、この災害が起きた時点でどこまで進められていたのでしょうか。そして、砂防ダムの効果という点にもかかわりますが、その計画の整備状況によって今度の土砂災害の被害にどういう違いがあったのか。あわせて伺いたいと思います。
池内政府参考人 昨年の広島の災害におきましては、百七の渓流で土石流が発生いたしましたが、このうち、被害の大きかった緑井、八木地区では、国が、御指摘のように、砂防堰堤を九基整備しようとしておりました。そのうち二基が工事中でございまして、他の七基は用地確保や調査設計に着手したところでございます。
 砂防堰堤には、土石流発生時に土砂を捕捉することなどによりまして、下流の被害を防止、軽減する効果がございます。緑井、八木地区の二基の砂防堰堤は、工事中ではございましたが、下流の被害を軽減し、人命を守りました。また、同じく、安佐南区の大町地区におきましては、砂防堰堤が土石流を完全にとめておりまして、下流の被害を防いでおります。この広島の災害では、砂防堰堤が土砂災害の防止、軽減に大きな効果を発揮しております。
 一方で、土砂災害危険箇所が非常に多うございまして、必要な箇所は全国でも九万カ所程度ございます。そのうち、対策済みは二万カ所となっておりまして、砂防堰堤の整備につきましては、非常に多くの時間を要するということもございます。財政制約がございますが、住民を守る効果の高い箇所等に優先順位をつけまして、計画的に整備を進めてまいりたいというふうに考えております。
大平委員 建設するはずだった砂防ダムが、九基のうち、わずか二基しか着手されていなかった。そして、その二基も未完成だった。しかし、未完成ではあったけれども、その場所では少なくとも命を守ることはできた。私も現場を視察しましたが、計画どおり九基できていればもっと救えた命があったかと思うと、本当に悔しくてなりません。
 つまり、私が言いたいのは、集中豪雨という自然現象をなくすことは難しくても、それによる被害、とりわけ、人命や生活基盤を根こそぎ奪われるという災害をなくし、軽減するのは、政治の責任。今回の災害は、早期の情報提供と避難勧告、避難指示のおくれ、危険地域であるにもかかわらず、宅地開発を野放しにし、危険の周知を怠った責任。そして、避難訓練や災害弱者の避難支援など、警戒避難体制の整備を怠ってきた責任。さらに、自分たちも危険だと判断し、ダムが必要だと認めてきた、その整備事業すらおくれにおくれてきた責任という、二重三重の政治、行政の責任が問われる政治災害だと言わなければなりません。
 先ほど御紹介した被災者の方は、この地域にどれだけの危険があるのかが知らされていれば、我々住民はあの豪雨の中にのんきに寝ているようなことはあり得なかったとおっしゃっていました。
 この方が言われるように、私は被災者には落ち度はなかったと考えますが、山谷大臣、どのように思われるでしょうか。
山谷国務大臣 大平委員の座右の銘は「アツくやさしく」ということで、先日もさまざまお声を聞かせていただきました。「アツくやさしく」、政治はそうあらねばならないと思いますし、思いを共有するものでございます。
 広島県においては、平成十一年に、土砂災害防止法制定の契機となった大規模な土砂災害が発生しましたが、今回再びこのような甚大な土砂災害が発生したことについては、大変残念であると考えております。
 この災害を受け、国土交通省では、土砂災害防止法を改正し、都道府県による基礎調査結果の公表を義務づけるとともに、土砂災害警戒区域における警戒避難体制を整備する等の措置を講じたところであります。
 また、政府の中央防災会議においても、総合的な土砂災害対策検討ワーキンググループを設置し、広島土砂災害等に関する課題を整理するとともに、住民に対する避難勧告等の適時的確な伝達や土砂災害防止施設の計画的な整備など、総合的な対策を検討しているところでありまして、本年の出水期までには報告を取りまとめることとしております。
 それぞれの住む地域がどのような状況、危険があるかを知る、把握するということは重要であります。被害の最小化を図っていかなければなりません。今回の土砂災害によって得られた教訓を十分に生かし、再びこのような甚大な被害が生じることのないよう、引き続き、関係省庁及び自治体と連携し、土砂災害対策に万全を期してまいりたいと考えております。
大平委員 今盛んに、防災といえば自助と共助ばかりが強調される状況の中で、その前に、本来、地域住民の暮らしと安全を守るという、この役割を担う政治や行政がこの点で大きな課題があったということをよく踏まえて、本当に被災者に寄り添って、今後の支援制度のあり方について検討しなければならないということを私たちはしっかり肝に銘じる必要があると思っています。
 その上で、今被災者の皆さんがお困りになっている問題について、一つずつお尋ねしていきます。
 一つは、被災した皆さんが現在一時的に住んでおられる公営住宅や民間借り上げ住宅など、仮住まいの支援に関する問題についてです。
 今皆さんが共通して悩んでおられるのは、今後、どこにどういう住まいを確保するかについての見通しが今なお持てないということです。家屋の損壊の程度はさまざま、これまで築き上げてきた地域の大切なコミュニティーもある、しかし、あんな恐怖はもう二度と味わいたくない、少なくとも砂防堰堤などが整備されるまでは怖くて戻れないなど、いろいろな気持ちが被災地では錯綜をしています。
 そんな中で、仮住まいの住宅支援の期間がことし八月までとなっていることに、皆さん大変大きな不安を感じています。これは、もともとは、被災から半年間、ことし二月までとしていたものを、まだ到底もとの家に戻れる状況ではないということで、半年間の延長をして、ことし八月までとしたものですが、では、この八月に見通しが持てるのかというと、決してそうはならないというのが、被災者の皆さんの率直な気持ちです。
 今回の広島の災害においては、都市部であったことでもあり、仮設住宅の建設は行わず、既存の公営住宅と民間の賃貸住宅を借り上げて被災者に提供するという形で行われています。
 ですから、この仮住まいが災害救助法で定められた借り上げ仮設住宅であり、仮設住宅の支援期間は被災から二年と定めているわけですから、半年ごとなどと小出しにするんじゃなくて、まずは来年八月までの延長を決めて、被災者の皆さんが、当面の心配に気をとられず、今後の生活再建、どうすれば恒久住宅へ移れるかをきちんと落ちついて考えることができる環境をつくるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
山谷国務大臣 応急仮設住宅についての考え方でございますけれども、災害救助法に基づく応急仮設住宅については、原則として、住家が全壊し、居住する住家がない者であって、みずからの資力では住家を確保できない被災者に対して仮住まいを提供するものであります。応急仮設住宅の提供期間については、通常、災害公営住宅の整備状況等、被災者に対する恒久的な住宅の確保状況を踏まえて期間を定めることとされています。
 今回の広島の土砂災害においては、広島市が、応急仮設住宅以外にも、公営住宅や国家公務員宿舎、雇用促進住宅等の公的な住宅、無償提供の申し出のあった民間住宅等の仮住まいを、全壊世帯に限定することなく、住まいの不安を抱える被災者に幅広く提供したものと承知をしております。
 また、広島市は、これらの住まいの提供に当たっては、対象者により取り扱いを変えるということではなく、住まいの提供期間についても、当初は六カ月とし、その後さらに、個々の被災者の状況を踏まえて、延長が必要な場合には六カ月延長するなど、一律の取り扱いとしているものと承知をしています。
 応急仮設住宅の提供期間は、大平委員おっしゃられるように、最大二年でございます。応急仮設住宅も含めた被災者の住まいの確保については、今後においても引き続き、広島県及び広島市において、個々の被災者の置かれた状況を踏まえつつ、対応を検討していくものと考えております。国としては、県、市と連携しながら、必要な助言に努めてまいりたいと考えております。
大平委員 私はここに、昨年発行された「災害救助の運用と実務」という冊子を持ってまいりました。今回の質問を準備するに当たって、いろいろ勉強させていただきました。
 これは災害救助法の手引とも言えるもので、各自治体はさまざまな事態への対応をこれを使って行っているというものなんですが、その中の応急仮設住宅の供与という項目の中に次のようにあります。
 一つは、住宅の供与期間にかかわらず、なるべく早い機会にこれらの者を恒久的な住宅へ転居させるよう措置する。つまり、どういう期間を定めようと、別に半年で区切ろうと区切るまいと、なるべく早く恒久住宅へ移れるよう努力すると明記をされています。
 さらに、その後には次のように書かれています。建設型の応急仮設住宅と民間賃貸住宅の借り上げによる応急仮設住宅の設置により供与期間に差異を設けることについては適切でなく、民間賃貸住宅の借り上げによる応急仮設住宅の設置による供与期間も同様に最長二年三カ月としていると書いてあります。つまり、民間賃貸住宅の供与期間も仮設住宅と同じにせよという趣旨がこの本の中にも書かれています。
 山谷大臣のもとでこの冊子も出され、こういうことを言われているわけですから、今度の広島の公営住宅あるいは民間賃貸住宅の借り上げによる住宅提供も、まず二年という期間を定めるように重ねて求めたいですし、現場は本当に全壊の世帯も半壊その他の世帯も混在しているわけですから、まとめて全て二年と定めるように求めますが、重ねて、いかがでしょうか。
山谷国務大臣 被災者の住まいの確保についてでございますが、今後においても、引き続き、広島県及び広島市において、個々の被災者の置かれた状況を踏まえつつ対応を検討していくものと考えておりまして、国としては必要な助言に努めてまいりたいと思います。
大平委員 住宅支援の問題にかかわって、もう一点お伺いをいたします。
 今回の広島の災害では、被災後に被災者みずから契約した民間賃貸住宅を、被災者向け借り上げ住宅として、借り上げ仮設とみなすという措置もとられています。
 そのもとで、今、被災者の方たちから悩みが寄せられていますのは、被災者向け借り上げ住宅の物件の条件が大変に厳しいという問題です。入居人数によって間取りと家賃が決められており、しかも、指定された不動産業者が提供する物件に限ると決められています。もちろん、何らかの基準を持つことそのものに私も反対ではありませんが、もっと実態に合わせて柔軟に対応すべきではないかと思うわけです。
 例えば、緑井七丁目で被災をし、この被災者向け借り上げ住宅で避難生活をしているある方から、次のようなお悩みを聞きました。娘が国家試験を控えており、勉強部屋を確保してやりたい、そう思っていたら、同じマンションでもう一つ部屋数が多い物件に住まれている方が近々引っ越されると聞いた、家賃は当然高くなるが、増額分の家賃は自分たちで上乗せをして払うので、そこに移らせてもらえないかと聞いたら、あくまでも入居人数と間取りは決まっているからだめだと言われたというお話でした。
 本当に柔軟な対応が求められていると思いますし、この制度も、背景には災害救助法の現物支給という考え方をベースにしていると思うんですよね。ですから、現物支給だけでなく現金支給という仕組みも加えれば、利用者も、自分たちで上乗せをすることも含めて、活用の幅が広がるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
山谷国務大臣 被災者向け借り上げ住宅の対象について、一定の基準を設定することはあるにしても、その基準に合致しない場合であっても、被災者に寄り添った柔軟な対応をすべきではないかというお考えかと思います。
 委員御指摘の被災者向け借り上げ住宅制度は、災害救助法に基づく応急仮設住宅として提供されているものではなく、広島市独自の制度と承知をしております。国としては、そのために、その扱いについて具体的に御意見をさせていただくという立場にはないわけでございますけれども、広島市において、被災者の住まいの不安の解消に向けた対応に努めておられるものと考えております。
 そしてまた、現行の現物給付による提供だけではなくて、現金給付も選択できるようにしたらどうかというお考えでございます。
 平成二十五年十月に、それまで厚生労働省が所管をしておりました災害救助法が内閣府に移管されたことなどを受けまして、被災者支援について幅広く検討するために、被災者に対する国の支援の在り方に関する検討会を設置いたしまして、昨年の八月に、被災者支援全般についての課題や対応策について中間取りまとめがなされたところでございます。
 御指摘の応急仮設住宅のあり方については、応急仮設住宅の位置づけや現物給付のあり方、他の低所得者対策等とのバランス、恒久住宅への移行のあり方について議論をして、現金給付とした場合のメリット、デメリット等を含めて、各委員からさまざまな御意見をいただいているところでございます。
 現金給付を含めた応急仮設住宅のあり方については、被災者に与える影響も少なくないことから、今後、幅広く関係者の御意見を聞きながら、さらなる検討を進めてまいりたいと考えております。
大平委員 国の災害救助法は全壊世帯を対象にしている、半壊以下は対象にならないということです。しかし、現場、被災地というのは、全壊世帯はもちろん、一部損壊や床下というのも含めて、半壊以下も、怖くて住めないという思いも含めて、今、もとの家には戻れない状況になっている。ですから、全壊世帯だけではなくて、半壊や一部損壊の被災者に対してもこうした住宅支援が必要だということが被災の実態から求められ、こうして広島市が独自の事業として行うことになりました。
 実態は、全壊であろうと、半壊や一部損壊であろうと、何より砂防ダムができないことにはもとの場所に帰ることもできないわけですから、本来であれば、私は、国としてこういう全壊以外の世帯に対しても責任を持つべきだと思います。
 そのことも述べて、次の問題に移りたいと思います。
 次に、砂防堰堤建設に伴う用地買収に関する問題についてお聞きをいたします。
 今度の土砂災害を受けて、国土交通省は、緊急事業として二十四渓流について砂防堰堤を建設することを決定しており、現在、その建設に係る宅地の地権者の方との用地買収の交渉のための準備を進めています。
 この点で被災者の方たちから寄せられているのは、その土地や建物の査定基準の問題です。今聞いていますと、あくまでも一般的な公共事業と同じように、現在の状況を基準に査定をするという話になっているとのことで、そのことに大変不安が広がっています。家が壊れているお宅は、その状態での建物の価値が査定され、土石流などで家が流されてしまったお宅は、建物の価値はゼロということになるわけです。
 先日、ある被災者の方からお伺いをしましたのは、この前、広島市の町づくりの相談会があったときに、市の担当者から、木造の家屋で三十年もたっているならもう二割ですよと言われた、びっくりした、そういうお話でした。
 まず国交省に確認なんですが、この広島市の担当者が言っているように、三十年たった木造家屋は二割だなどのような、一律に査定の基準を設けているという事実があるんでしょうか。そして、それは国交省の立場なのかどうか。あわせて確認したいと思います。
長谷川政府参考人 お答え申し上げます。
 建物の補償につきましては、個別に建物を調査いたしまして、建物の構造や材質などによる異なる耐用年数を用い、また維持管理の状況などを判断して、補償額を算定することといたしております。
 三十年を経過すると一律の補償率で補償するということではないというふうに考えております。
大平委員 今考えないといけないのは、この地域全体の安全を守るために、堰堤にかかる皆さんは転居をしなければならない、そうだとすれば、当然、この人たちは次の住まいを確保しなければならないわけで、それが見通せるだけの、国としての責任を持った補償をしなければならないということです。
 しかし、今現地でのやりとりで聞こえてくるのは、ただではないから安心せよだとか、皆さん当然貯金もしているんでしょうなど、被災して心身ともに大きなショックを受けておられる皆さんにそんなことを言うのかと耳を疑うような話が次々と私のところに寄せられています。本当に不安と怒りが広がっています。
 用地買収の査定基準の問題、国交省としてこうした実態にどう応えるのか、教えていただきたいと思います。
長谷川政府参考人 お答え申し上げます。
 災害復旧事業の査定基準、こういったものにつきましては、適正な財産権の補償を行うという観点から、基本的には、契約締結時の時価によって算定するということになっておる次第でございます。
 なお、住宅や土地が被害を受けて毀損したり滅失した方の生活再建については、重要なことであると考えておりまして、国土交通省の所管ではございませんが、被災者生活再建支援制度が準備されているというように承知をいたしております。
 いずれにいたしましても、砂防事業に係る用地買収につきましては、契約締結時の土地建物の状況に応じて補償額を算定することとなるということでございます。
大平委員 被災者の皆さんは、何も豪邸に住ませろと言っているわけではないのです。もともとは、ずっと今のこの家、ここに住み続けるつもりだったのが、こういう災害が起きて、地域全体の安全のために立ち退かないといけなくなったわけだから、それにふさわしい補償をしてほしいという当然のことを言っているわけです。
 ある被災者の方から、次のようなお話を聞きました。災害があって、安佐南区のイメージは悪くなり、不動産の価値は下がると思われていたが、現実には、今マンションの相場から何から全部上がっている。別の被災者の方からも、砂防ダムができて地域の安全がしっかり確保できれば、もともとこの地域は、交通の便もよく、高速道路の乗り口も近くて、非常に人気の高まる可能性があるというお話を聞きました。
 つまり、緑井や八木で被災した方が、それでも、地縁、血縁もあって遠くには行きたくない、何とかこの地区で今後も住み続けたいと思っても、この補償額が低ければ、住みなれたこの地域に住宅再建ができないということになりかねません。
 具体的に一点伺いますが、用地買収の査定に、地域の安全が確保されたことによって生まれるであろうこの地域の資産価値、これも考慮に入れるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
長谷川政府参考人 お答え申し上げます。
 災害復旧事業により取得する土地に対しましては、正常な取引価格をもって補償することとされております。
 この土地の正常な取引価格につきましては、近傍類似地の取引価格を基準といたしまして、土地の位置、形状、環境などの価格形成上の諸要素を総合的に勘案して算定することとなっております。
 砂防事業の施行による地域の安全性の確保についても、その要素の一つというふうに考えております。
大平委員 冒頭にも述べましたが、政治や行政が本来やるべき仕事を怠った二重、三重の責任によって起きた政治災害なわけです。そして、今度の災害があったからこその緊急事業として、地域みんなの安全確保のためにこの人たちは立ち退きを迫られているわけです。決して一般の公共事業と同じように考えることはできませんし、同じように考えてもらっては本当に困ります。
 ある方は、自分たちは本当に次の住まいに移り住めるのか、不安で夜も眠れない、被災者の我々は第二、第三の被災者になりつつある、心的外傷後ストレス障害ですけれども、PTSDになっている方もいて、第二、第三のPTSDも広がるのではないかと、不安の思いをおっしゃっておられました。
 立ち退きの対象になる被災者の皆さんは、地域の安全が確保されるならと、皆さん、気持ちとしてはみんな協力したいと思っておられます。しかし、次の住まいの確保の見通しが持てなければ、立ち退きたいと思っても立ち退けないではありませんか。それでは、結局、地域の安全も守ることができません。
 ぜひ政府としても、この立ち退きの対象になる人たちの次の住まいの確保を見通せるだけの補償をしてほしい、この声に応えていただきたいと考えますが、政務官、いかがでしょうか。
鈴木大臣政務官 大平先生おっしゃいますように、立ち退きの対象になる被災者の方々の移転先の住宅の再建のための資金を確保する対策は極めて重要であろうというふうに考えております。
 その上で、本件事業に伴う用地買収に伴う補償につきましては、ほかの災害復旧に係る事業と同様に、国土交通省の公共用地の取得に伴う損失補償基準に基づきまして、適正に行ってまいりたいというふうに考えております。
大平委員 重ねて、本当にこの人たちのやむにやまれぬ思い、みんなに協力したいけれども、しかし、次の住まい、どこに住めばいいのか、この前に聞いた、ことし八月までの住宅支援、本当にそこまでに決まるのかという不安も感じながら、こうした次の住まいに向けての不安を抱えておられます皆さんの思いに応えてもらえるように、重ねて訴えたいと思います。
 最後の問題に移ります。
 被災者は、行政に言われるまでもなく、一日も早くもとの生活を取り戻したいし、一日も早く、誰に遠慮することもなく、自分たちが気持ちよく住み続けられる家を確保したいと願っています。それを支える上で、被災者生活再建支援法の拡充は欠かせません。
 三月十二日付の中国新聞では、被災者生活再建支援法に基づいて住宅の被害に応じて支払われる基礎支援金を受け取った世帯のうち、新築や補修などで追加の支援金、加算支援金の受給が決まったのは五割にも満たない、被災した場所に戻る不安や経済的な理由から再建できないことなどが背景と見られると報じています。つまり、現在の上限額では住宅の再建に踏み切れないという人が半分以上いるという報道でした。
 さらには、余り知られていませんが、今度の安佐南区、安佐北区の土砂災害では、千五百台近い自動車が流され、廃棄処分となっています。廃棄の費用は、さまざま制度があり、活用されましたが、新たに買いかえるのは、基本的には全て被災者の自腹となっています。こうした、今は表には見えていないものも含めて、相当な規模で被害が出ているわけです。
 ですから、この法律の名前のとおり、文字どおりの生活再建支援を図るための制度として、この制度を質、量ともに、両面で拡充することが求められていると思います。支援金最高額を現在の三百万円から五百万円に引き上げること、支給対象を半壊まで広げること、自宅の再建の難しい被災者も幅広く活用できるよう総合的な居住確保のための支援策にしていくことなど、この拡充が求められていると考えますが、山谷大臣、いかがでしょうか。
山谷国務大臣 自然災害により生活基盤に著しい被害を受けた方に対して、その生活の再建を支援することは重要だと認識をしております。一方で、住宅の再建等、被災者の生活再建については、保険や共済等の自助、共助が基本であり、公助でそれを側面的に支援するということが適当であると考えております。
 被災者生活再建支援制度については、このような趣旨により、被災者の生活再建を後押しするための見舞金的なものとして、全都道府県の相互扶助及び国による財政支援により対応するものでありまして、基礎支援金については、全壊等の場合は百万円、加算支援金については、建設、購入の場合は二百万円、合わせて最大三百万円となっております。
 この被災者生活再建支援制度の経緯でございますが、阪神・淡路大震災で自助、共助の限界の認識がございました。収入、資産の不足により、事前の保険加入、耐震化や、事後の生活再建を行えない人々が多数存在した。町の市民の方々、知事会の要望、また国会による超党派の議論もありまして、被災者生活再建支援法の制定がなされ、そして、平成十六年、十九年と拡充がされてきたわけでございます。
 被災者生活再建支援金の対象拡充、支給額の増額については、他の制度とのバランス、国、地方の財政負担などを勘案する必要があり、慎重な検討が必要と考えます。引き続き、被災者の生活再建については、被災地方公共団体や各府省など関係機関と連携し、しっかりと対応してまいりたいと考えております。
大平委員 他の制度とのバランス、あるいは過去の災害とのバランスなどと言われますが、本当に大事なのは、被災した人たちがもとの生活、安心、安全の生活を取り戻す上で今必要としている支援を行うことこそ、政治の責任ではありませんか。重ねて、生活再建支援法の拡充を求め、そのことを強調し、私の質問を終わります。