国会質問

2015年04月24日

アジェンダ2020・提言生かし持続可能な東京オリンピックに(文科委員会)

○大平委員 日本共産党の大平喜信です。
 そもそも私たち日本共産党は、二〇二〇年の夏季五輪について、東京招致については反対をしてまいりましたが、東京開催が決定した後は、その決定を尊重し、スポーツを通じて国際平和と友好を促進するというオリンピック精神の実現を目指して努力すると同時に、開催やその実施計画に当たっては内外からさまざまな不安と疑問の声も出ており、無条件の信任ではないという立場を明確にしてまいりました。
 例えば、四月二十一日付の朝日新聞には、バレーボール女子の元全日本代表でアテネ・オリンピックにも出場された大山加奈さんが、毎月のように福島県を訪れ、スポーツ教室や小学校などを訪ねていることが紹介をされていました。大山さんは、福島の現状と県民の皆さんの気持ちに思いをはせたときに、東京オリンピックに対して素直に喜べないと語っておられます。楽しみだけれども、今優先すべきは被災地の生活再建ではとの率直な疑問も投げかけておられます。
 私は、オリンピック開催に対するこういったさまざまな声に耳を傾けながら、国民、都民の理解、合意をもとに開催準備を進めることが重要であると思いますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

○下村国務大臣 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックが開催されるということは、東日本大震災の復旧復興を加速させることによって、二〇二〇年には世界の方々が被災地を訪れることによって、日本が見事に復旧復興を遂げた、そういう意味でのターゲットポイントにもなってくるというふうに思います。今までのマイナス部分を、いかに逆にプラスで活用するかという視点の中で復旧復興も捉える必要があるのではないかと思います。
 そのために、東京大会を成功させるために、しっかりとした国民の理解と協力を得ていくことが必要不可欠であり、国民の声に真摯に耳を傾けることが必要であるということは当然のことであるというふうに思います。
 私のもとにも、これまで、全国の地方自治体等さまざまな立場の方々から、さまざまな御提案や御要望、御意見をいただいているところであります。これらの声については、必要に応じ、組織委員会や東京都とも情報を共有しながら取り組んでいるところでもあります。
 今後も、こうした国民の声に謙虚に耳を傾け、一方で、二〇二〇年の東京大会の成功に向けてしっかり取り組んでまいりたいと思います。

○大平委員 しっかり国民、都民の声に耳を傾けてということでお願いしたいと思います。
 今度の法案は、昨年の衆議院解散により審査未了となったものが今国会に再度提出されたわけですが、その間に一つ重要な進展がありました。昨年十二月八日にIOCの総会で、オリンピックアジェンダ二〇二〇が承認されたことです。
 このオリンピックアジェンダ二〇二〇は、どういう内容で、何のために、またどういう経過で発表されたものなんでしょうか。

○久保政府参考人 アジェンダ二〇二〇は、二〇一三年九月にIOC会長に就任されたバッハ会長のリーダーシップのもとで、今後のオリンピックの改革の方向性につきまして、IOCや各国のオリンピック委員会、国際競技連盟などからの意見を踏まえて取りまとめられた提言でございまして、二〇一四年十二月のIOC総会において全会一致で採択されたものでございます。
 内容につきましては、合計四十項目にわたる提言が盛り込まれております。例えば、競技会場に関しましては、既存施設の有効活用や仮設会場の利用の奨励、地理的要因、持続可能性を理由とした開催都市以外での競技開催の容認、大会の全ての側面への持続可能性の導入、組織委員会による追加種目の提案の容認、大会運営経費の削減、八百長やドーピング対策、オリンピックの価値に基づく教育の普及、スポーツと文化の融合などに関する提言が記載されているところでございます。

○大平委員 私もこの全文を読みまして、大会開催のあり方から、選手を守るという問題など、全体として大変大事な内容が書かれてあると感じました。
 どの項目も大事なんですが、とりわけ、先ほど答弁もありました、運営経費の削減、持続可能性について触れられているのが提言の四と提言の十二です。それぞれどのように述べられているか、簡潔にお示しください。

○久保政府参考人 まず、提言四におきましては、「オリンピック競技大会のすべての側面に持続可能性を導入する」として、「持続可能性がオリンピック競技大会の開催計画の策定と、開催運営のすべての側面に取り入れられること」などを求めております。
 次に、提言十二に関しましては、「オリンピック競技大会の運営経費を削減し、運営ではより柔軟性を持たせる」として、「オリンピック競技大会でのサービスの水準、大会の準備とその実施について、組織的に見直す。」ことなどを求めております。

○大平委員 提言四、「オリンピック競技大会のすべての側面に持続可能性を導入する」、提言十二、「オリンピック競技大会の運営経費を削減し、運営ではより柔軟性を持たせる」と述べられています。
 私は、一般市民の方々から四万以上の提案と千二百のアイデアが出されてまとめられた、まさに世界の市民の声が結実されたこのオリンピックアジェンダ二〇二〇をきちんと踏まえて、とりわけこの提言四、提言十二もしっかりと踏まえて、東京大会の開催準備と施策の推進に当たるべきだと考えますが、大臣の御所見を伺います。

○下村国務大臣 アジェンダ二〇二〇は、IOC総会において全会一致で採択されたものであり、二〇二〇年東京大会の準備、運営に当たって、これを尊重して取り組みを進めていくことは重要であるというふうに認識しております。
 政府としては、大会の成功に向けた取り組みが円滑に進むよう、引き続き、組織委員会及び東京都などの関係者と密接に連携してまいりたいと思います。

○大平委員 このアジェンダ二〇二〇を受けて、大会組織委員会がことし二月に発表した大会開催基本計画、その三章の「会場・インフラ」の項目の中に次のように書かれています。競技会場の具体的な配置等については、現在、アジェンダ二〇二〇等を踏まえ、レガシー、都民・国民生活への影響、コスト増への対応等の観点からレビューを実施中と述べられています。
 会場の問題でいえば、新国立競技場の建てかえの問題も大きな焦点になっています。ぜひこれもアジェンダ二〇二〇の提言の精神で対応していただくよう強く求めておきたいと思います。
 同時に、アジェンダ二〇二〇でも、「すべての側面に」と強調しているとおり、その立場というのは決して競技会場だけにかかわっている問題ではありません。安倍首相は、今回のオリンピック開催に向けて、世界に日本を発信する最高のチャンスとして、我が国が活力を取り戻す弾みとなるものと述べられ、下村大臣も昨年十一月十一日の我が党の宮本岳志議員のこの場での質問に対して、「二〇二〇年オリンピック・パラリンピックは、東京一極集中を加速させるものではなく、日本全体を元気にし、さらなる発展を目指すための大きなチャンスと捉えることが重要である」と答弁されています。
 まさに、このオリンピックが、全体を通じて、都市の再開発や大型公共事業の推進、投資など、いわゆる成長戦略の弾みとして位置づけられています。それは、アジェンダ二〇二〇が述べている、大会の全ての側面に持続可能性を導入し、運営経費を削減するという提起や、スポーツを通じて国際平和と友好を促進するというオリンピック精神に逆行するのではないでしょうか。
 例えば、国と東京都との連絡協議会幹事会の協議事項リストを拝見しますと、そこには、テロ対策など治安対策の強化などと並んで、輸送手段の整備の項目の中に、三環状道路の整備、外郭環状道路の開通実現などが要求されています。これは、少なくない都民の方も反対をしている、地下十六キロを通す道路計画に総額一兆六千億円、一メートルをつくるのに一億円をかけるというまさに大型開発の事業ですが、これがオリンピックに乗じて行われようとしているわけです。
 こうした事業がアジェンダ二〇二〇との関係で果たして許されるのかと思うわけですが、大臣、この点、いかがでしょうか。

○下村国務大臣 今後のオリンピック改革の方向性を示したアジェンダ二〇二〇を踏まえた大会の準備、運営を行うことは、IOCの方針にも合致し、望ましいことであり、東京都でも、これを踏まえ、競技会場の見直しに着手しているところであります。
 一方、大会の開催に当たって、選手や観客の円滑な輸送を実現することは、大会の成功に不可欠な要素であり、御指摘の三環状道路の整備などは、そのような観点から要望されているものと考えます。
 アジェンダ二〇二〇に掲げられた持続可能性や運営経費の削減にも留意しつつ、東京オリンピック・パラリンピックの成功に向けて、組織委員会や東京都と連携しながら、引き続き政府一丸となって取り組んでまいりたいと思います。

○大平委員 アジェンダ二〇二〇の提言十二には、先ほど引用したものに続いて次のように書かれてあります。「IOCとその関係者は大会運営のコストと複雑性を封じ込めるため、オリンピック競技大会でのサービスの水準、大会の準備とその実施について、組織的に見直す。」このように、IOCは非常に高い決意を持って、一度決まった計画も含め、コスト削減に向け、必要であれば見直しを求めていることをうたっているわけです。
 ですから、政府としても、このアジェンダ二〇二〇の立場にしっかり立って一つ一つの事業をきちんと見直しながら進めていくことを、いま一度強く求めておきたいと思います。
 もう一つ伺いたいのは、大会推進本部の設置についてです。
 今までのオリンピックやワールドカップなどの際に整備された特別措置法で、今回のように全大臣が構成員となった推進本部というものがありましたでしょうか。

○久保政府参考人 過去の東京五輪、札幌オリンピック、長野五輪、サッカーワールドカップ大会につきましては特別措置法が制定されておりますけれども、これらにおいて全大臣が構成員となる推進本部は設置されていないところでございます。

○大平委員 過去のオリンピック、前回の東京、一九七二年の札幌、一九九八年の長野の際に、今回のように専任の大臣が置かれたことはありましたか。あった場合は、その期間はどれぐらいだったか、教えてください。

○久保政府参考人 過去に専任のオリンピック担当大臣が置かれておりましたのは昭和三十九年の東京大会でして、専任の大臣が置かれていた期間は、昭和三十九年の七月十八日から十一月九日までの約四カ月間でございます。

○大平委員 答弁のあったとおり、今回の法案では、過去に前例のない全大臣を構成員とする大会推進本部を設置し、大会開催の五年以上も前から大臣を一人増員して専任の担当大臣を置くとした異例の体制づくりを進めることが盛り込まれております。結局、オリンピックを成長戦略に位置づけ、それへの強力な推進体制をつくろうとするものにほかなりません。
 改めて、オリンピック精神とオリンピックアジェンダ二〇二〇に基づき、国民、都民の皆さんの声や懸念にしっかりと耳を傾けながら大会の準備に取り組むこと強く求めて、私の質問を終わります。